髪をなびかせる風に乗って聞こえて来るのは、小動物の平和な鳴き声。問題はその数が多いことだ。ニャーニャーミャーミャーミイミイ、春一番の突風よりもやかましい。どこかのネコ好き金持ちがネコを餌付けし定住させているようである。そこかしこにブチやら黒やら白やらのネコ達が散らばって、各々顔を洗ったりあくびをしたり忙しい。

 あそこのネコの塊は集会中だろうか、一際でっかい青いネコが地べたに伏せてニャーニャーと──。

「って、何をやってるのだアオイ」
「あ、あにきだー、ニャーニャー」

 後ろから抱き上げるように引っ張りあげて起こすと、くるりと向きを変えてじゃれついてきたので頭を撫でてやる。

「あにきを待つ間この辺のネコ達とお話してたッス!」
「言葉がわかるのか?」
「にゃんとなく?」

 にゃるほど、にゃんとなくならわかるのかもしれない。こうして撫でてゴロゴロいうところはまるきりネコであるし。アオイとお話をしていたらしいネコ達は、その人だあれ? と言わんばかりの顔でアルジェンを見上げている。

「この人はボクのあにきのアルジェンさんッス! カッコよくてイケメンで優しい、いずれトレジャーハンターの頂点に立つ方ッス! 有名になる前によーく拝んでおいた方がいいッスよー」

 アオイの説明に、ネコの群れ達は「へーマジ?」「すごいんだってさ!」「やるじゃん!」「おおー」って感じにミャーミャー鳴いた。その賞賛の嵐にアルジェンは得意げになって、

「フッ、見る目のあるネコ達なのだ。だがここにいるネコ達が束になってかかっても、オレの弟分ネコには敵わんな!」

 誇らしげにかたわらの子ネコを撫でた。しかしネコ達もめげちゃいない、そんなこと言わずに遊んでおくれよう、ニャーニャーミャーミャーと、次々アルジェンに飛びついていく。

「ぬおーモフモフフッカフカだ! 前が見えないのだ! こ、コラ! やめるのだ……!」
「さすがあにき! ネコに慕われまくって人望ならぬニャン望がすごいッス!」

 ……慕われているというより遊ばれている気がするが。兄貴が誇る子ネコは、仲間のネコに慕われる様子を見て 満足げに微笑んだのだった。
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