目の前で仲良しな二人組が手作りチョコ菓子をあーんとかやってるのを見てるってのがどんな気分かというと、まあ普通に辟易ものだ。ケンカしているよりいいけれど。
 お菓子のご相伴に預かりながらミドはそんな感想を抱いた。

「あーにき♪ お味はいかがッスか?」
「うーむ、こってりまったりして……食べると心が温まるのだ」

 よくそんな恥ずかしいことを笑顔で言えるものだ。横のネコもこれは恥ずかしかったのか、にゃにゃーんと身体をクネクネさせている。ニャン体動物……とか思ったのは寒いので心に留めておくことにした。

「アルはネコの子来てから楽しそうでいいよなあ」
「何を言う! 弟分を持つということは責任重大なのだ」
「例えば」
「にゃんこだからな、こうして定期的にモフモフカマッテ―しないと寂しさで体調不良を起こしてしまうのだ!」

 横に座るネコに抱きついてすりすりベタベタモフモフモフ。ネコはウニャウニャ幸せそうだ。
 ネコってあんまり構い過ぎても良くなかった気がするんだけど、定期的にだからいいのだろう。
 
「でもそれおれがアル達と会うたびやっているような気がする」
「そんな事を言ってためらっている間にアオイが寂しさで死んでしまったらどうするのだ!」

 余計な事を言ったらイチャイチャが悪化してしまった。膝に乗せて抱いて二人の世界だ。

「アオイが死んだらオレも死んでしまう―、うー、ニャンニャン」
「ニャンニャン♪ 」

 握った拳と拳を合わせてなにやら二人の間でしか通じないイチャイチャを行っている。
 冬の風が寒いからと閉めきっている、宿の部屋の空気が甘ったるい。
 テーブルの上にはデッカいホールの溶けかけチョコケーキとココアとチョコチップクッキーの皿がデデンと乗っかっている。
 ミドは席を立った。

「あれ、ミド? どこへ行くのだ」

 返事をしないままドアの前まで行って、ようやくミドは口を開けた。

「苦いコーヒーが欲しくなったから買ってくる」

 ここにはネコ専用の、甘いミルクで作られた飲み物しかない。