天空の城ラピュタの元ネタと聞いて読んでみた。冒頭のガリバーさんの手紙のくだりでいきなり目当てのラピュタが出て来て、テンションが上がる。
でも実際に読んでみるとラピュタパートが一番つまんなかった。この世界の人ラピュタ人は音楽と数学以外はすごいマヌケでアホだし、割と色んな国の滞在を楽しんでいたガリバーさんも、この国にはすぐにうんざりしている。尺も短い。こっから大冒険ボーイミーツガールに膨らませたらしい宮崎駿さんは素直にすごい。
やっぱり一番有名で、確かドラえもんでもパロ回のある小人の国、リリパット渡航記がトップクラスで面白いかも。巨人だから勝てるとも限らないし、しょんべん消火のくだりが酷い。小人だから可愛いとかもない、最終的に善意で目を潰して奴隷になれと迫り来る王様が怖い。(逃げるけど)
その次に面白いのが巨人の国、ブロブディンナグ渡航記。個人的なお気に入り話はこっちかなあ。この話のヒロインのデカ幼女、グラムダルクリッチがとても可愛い。
巻末解説いわく、作者のジョナサン・スフィフトは母親に捨てられた女性不信で、29歳の時に14歳年下のステラ、44歳の時に24歳歳下のヴァネッサを知って三角関係しつつ女子二人とも先に死んだ(ヴァネッサに至っては自殺説もあるそうな)そうだが、純粋な友情とはいえ、この幼女が一番可愛く印象的に描かれているのも本人の女性経歴のせいか。
後は死者を呼び出せる国マルドナーダとか、ラピュタ人に影響されて変な研究ばっかして国がめちゃくちゃなラガードとか、不死人間が生まれて来る国ラグナグとか……。何にしても風刺、皮肉の要素が強い。面白い国がいっぱいだけど最後ガリバーさんが語っているように、楽しい不思議な冒険記ではないことは確か。最後に訪れた国フウイヌムの思想と生活にどっぷり浸かり、帰化したかったのに結局追い出されて、最後は故郷の国で、奇人そのものの生活をしていて妻とも相容れなくなってしまった、というオチはだいぶバッドエンドのような……。というか作者も晩年はぼっちで精神病んで死んでしまったらしいね。巻末解説担当も、作家としては称賛しつつ、「リアルでは関わりたくない(要約)」と言い放ち、奇人変人ぶりを笑っているので、作者は相当な変人だったのが伺える。