再読。この巻が一番当時好きだったがこの不動のお気に入りは変わらないかも。学生の帰省という日常の範囲で「離れていても想い合う二人」を描く手腕、素晴らしい。ここに魔王と勇者という難しい立場であること、「夢の中で会う」という儚いシチュエーションが加わって、コメディなのに泣けてくる。微笑ましい恋心描かせたら天下一品だわ、夏緑先生。
もー1話のリュウナのツッコミ不在のお嬢様と、「ヒロが大好きで毎日寂しいのに彼の邪魔をしてはいけない」と寂しさを我慢する様子が可愛い。愛する人の気持ちを考えて動く事、コレは他のヒロインに欠如してる能力。(ペルチェなんかはこの巻でも成長が見えてくるが)。
お姫様抱っこの形でヒロの夢の中に飛び込むのも茨で囲んだ小さな家での新婚さんごっこが可愛すぎるんだよなあ。お互いが一生懸命伝えた大好きの気持ちも、真夏の夜の夢として消えて、リュウナしか覚えてない……。と思わせておいて、最後ヒロの心の底に残ってた記憶がサキュバスの能力をちょっとだけ凌駕出来るの、愛だよ、愛!
2話は全然リュウナ出て来ない話のはずが、ヒロが事あるごとに何度もリュウナを思い出すから、なんならいる時より存在感デカいんじゃ疑惑が。劣等生勇者の呪歌さん助けるのも、リュウナを思い出したからだし。このヒロの重傷っぷりよく覚えてるし、ピンチの際リュウナ以外はオレが死んでも悲しまないな、って感想なのも何気に残酷である。(経験値扱いばかりしてる他ヒロイン達の自業自得だが)
最後の魅力的な提案を蹴るのも、リュウナがいるから。そんな彼の光であるリュウナに電話をかけるところで終わるラストほんま美しい。
ヒロの父いわく、ご先祖のスサノオからして、オロチを倒したらひとところに落ち着いて家庭に入る旦那って事で、ヒロの一途な旦那らしさも血筋なのか。
「こういうお使いクエスト的なもので人にちっちゃな幸せを届けるときが、一番勇者やっててよかったって思います」
自分はまた大変な日常に戻るのに、相手の成功を心から祝えるヒロ、素朴だが本当に勇者の器がある。