アラハビカのニケ王子×プリンセスククリイメージの雰囲気ニケクク小説。アニメ版の月のブランコ好き過ぎて……。ニケククに二人乗りしてほしいと思っちゃって……。
月の見えない夜のこと。
キィコ、キィコ、キィコ。
クジラの腹から降りた月。ブランコ状の欠けた月。一人で姫様座ってる。
夜空の月の代用に。ブランコ代わりに光る夜。一人で姫様座ってる。
長い三つ編み揺れている。寂しくヒラヒラ揺れている。
キィコ、キィコ、キコ。しばらく一人で揺れていた。
そしたら羽ばたき聴こえたよ。竜の飛ぶ音聴こえたよ。
赤い月のような髪に竜のツノ、青空の瞳携えて。
姫様静かに見おろした。
「あなたはだぁれ?」、姫問えば、
煙に包まれ姿消え、
代わりに少年生まれ出る。
「オレはニケ。君が望むなら、王子にも、勇者にも、盗賊でもなってやる」
「じゃあ、王子様!」
少年、少女の望むまま、冠被って王子様。
「ブランコ二人が楽しいぞ」
やんちゃな王子、姫の後ろへ降り立って。
キーコキコキコ忙しなく。一人の時よりいそがしく。ブランコせっせと漕ぎ出した。
「怖い、だけど」
「だけど?」
「楽しい、一人より!」
姫の言葉に気を良くし、王子ひたすら月を漕ぐ。
くじらの腹に届くほど。夜空の闇に届くほど。
漕ぎつかれた王子姫。気の毒がったお月様。二人が座れる大きさに、ぐんぐん伸びて飛んでいく。
星も見えない夜の事。
高い、高い空の上。
ここなら誰も聴こえない。
二人の言葉は相手だけ。
他の誰にも聴こえない。
だから姫様安堵して。
王子の耳に囁いた。
「夜が明けてもそばにいて」
ささやか大きなワガママは。
王子一人が聴いたとさ。