やってるっていうか読んでる。こんな事言ったらいけないけど、グリムノーツって正直最初から純粋なノベルのがいいようなゲームな気がする。いやこういうノベルは商業じゃ需要ないに等しいからやっぱソシャゲしかないよなぁ、って思うんだけど。やっぱさぁ、内容がソシャゲより小説好き向けなんだよなぁ、これ。いうてギャルゲーでもなければサスペンスやミステリーでもないノベルゲームの需要と市場って、多分同人ゲームやフリゲにすらまともな土壌がないと思うしな。
千一夜物語の想区編のキャラ配置やら設定には感心した。そうそう、千夜一夜物語って、アレは作中の語り手シェヘラザードが語る話なんだよね。だからその中でもいっとう有名な、グリムノーツで引用されている「アラジンと魔法のランプ」も、「アリババと四十人の盗賊」も、有名な部下のジャーファルも、全部作中作って形なんだよね。その作中作の中でまたキャラクターが物語を語り出すもんだがら、物語の中の物語の中の物語……くらいに構成がややっこしくなってた気がする。だから終盤の展開は上手いなぁ、って思ったし、ここの世界のボスの配置もそれしかないよね、って感じ。
敵地の潜入方法にはニヤリとしたし、シェヘラザードとここのボスの描き方というか台詞回しに説得力があるなと思った。おそらくシナリオライター本人が千一夜物語にのめり込んだ事があるんだろう。次のグリム童話総合区域みたいな話でも、割とマイナーだと思う「ねずの木」とか小ネタとして話題に出て来るし、流石にメイン題材はタイトルくらいは誰でも知ってる有名作だけど、多分読んだんだろうなぁ、全部。グリム童話も千一夜物語も。でないとこんな言葉は出て来ないようなものがいっぱい出て来るんだよな。
私も一回、くるみと七人のこびとたちの影響でグリム童話全読破とか挑戦しようとしたんだけど……アレきっついよねぇ、有名作以外つまんないか超グロイかで……。千一夜物語はメジャー作以外も全部面白くて、でもなんで有名どころが限られるかって言ったら、有名どころ以外はエロ描写とか多すぎる過ぎるせいだろうなって感じだけど(写した女のま〇こ写す鏡の話とかエロゲでもねえわレベルだし)、グリム童話はぶっちゃけ有名どころ以外ほとんど面白くない。ねずの木は面白い方だけどグロ過ぎるしな。
知らんでも楽しめるようにはなってるけど、やっぱグリムノーツって、小説好きで、そこそこ元ネタ知ってる人対象っぽい話だよね。千一夜物語の想区の話は特に、黒幕とシナリオライター同様に、千一夜物語にのめり込んだ体験がないと色々ピンと来ないんじゃないかなぁ……という気がする。この作品のアラジンってのは、主人公達にとって特別な存在だから、ここまでグリムノーツの話を真面目に読んで来た人なら知らんでも感動できる要素はあるんだけど、ここのボスとシェヘラザードの話は、千一夜物語を読んで、シェヘラザードの物語の聞き手になった体験がないとあんまピンと来ないんじゃないかなぁ。いやそこはプロの作った話だから、「グリムノーツという作品の中のアラジン」という重要な要素も相まって、知らんでも感動できる文脈にはなってる。なってるんだけど、やっぱ知ってた方がいい構成だろうなって。いや千一夜物語かなり長い事かけて読破したばっかだったから、油壷とかロック鳥とか、小ネタ含めて私はニヤニヤしっぱなしだったんだけどさ……。
シナリオライターのラノベデビュー作のサンプルチラッと試し読みしても感じたんだが、このライターは本当に物語ってものが好きで信じてるんだろうね。そういう文章だと思う。でもやっぱ童話大好きな小説書きと、そうでない読者だと温度差って多分あるよな。小説を自分で書くくらい小説が好きな人ってのは、多分ほとんどの場合童話とかそこそこ好きだろうし。
いや、最近昔書いた下手くそな童話パロ小説を褒めていただいたからすごい思うんだけど。あれ、褒めてくれたのは本心だろうなってわかるんだけど、やっぱ小説書き同士だからどうしても、知識レベルが同じ程度同士の感想ではあるよな……って。
小説書き同士の読み合いの問題って、慣れ合いよりは「知識が同レベルくらいあると思われる同士の感想になってしまう」ってとこのが問題な気がする。普段(ネットのみでも)そこそこつるむ同士ってなったら、多分好きな作品の傾向も近いだろうしな。
グリムノーツもそんな感じで、多分ライターと同じく古典的名作や童話にのめり込んだ事のある私と、そうでない人でかなり温度差が出そうな気配がある。なんなら私も、へったくそなグリムノーツもどきみたいなのを夏夢夜話とかの影響で書いてたようなオタクだからな。
なんだろう……
童話、古典的名作小説パロそのものが割と小説書き、或いは創作者向け創作というか……。そういや灰色さんのメモリーロストネバーランドもメチャクチャ泣いたんだけど、アレも「創作者じゃないとピンと来ない部分はあるかもしれない」ってレビューを某氏が書いてたような……。あのレビュー書いた某氏、私みたいな感情ぶちまけゲロ文じゃなくて、本当にレビューが上手いよね。あの人も創作した事がある上で、読者として褒めている上で、ああいう客観的な意見も出せるの、老舗レビューサイトの貫禄がある文章だと思う。私はああいうレビューは全然書けない。作る話も書く感想も、客観性に欠けていると思う。私の感想文とか創作って、ウケが良い人と悪い人でだいぶ温度差があるんだが、そこら辺の問題だろうな。
レビュー文の一部を引用するだけで、自作とグリムノーツを比べるだけで、歳を食っても全く変わらない己の人間性の幼稚さと、人として熟成された落ち着きのある他人の人柄との格差を感じでへこむ夜中。
話を戻すんだが、
狂四郎2030のロミオとジュリエット、ハーメルンのバイオリン弾きの母を訪ねて三千里くらい原型がなくなってる(良い意味で)下敷きのやり方じゃないと、明確な元ネタありの作品って難しいのでは?(グリムノーツは結構人を選ぶ専門分野作品なのでは?)って思った。
最近
自分が読者として「これ、好っきだな~♡」って思うほど「そりゃウケねえだろうな……www」ってわかるようになってしまって切ない時ある。うん、今はグリムノーツの事なんだけどさ……。