正直グルグルランド1(無印)の方は、単行本が精々2巻くらいしか出てなかった頃に何故か出ているファンブックなので、ファンブック的解説本としては酷い。酷いんだけど、魔王ギリの封印事情に関しては興味深い事が書いてある。
300年前、魔王ギリによる世界征服の危機に、人々は「ミグミグ族」に助けを求めた。彼らは『300年後解ける封印』でギリを封印。これは、300年後ミグミグ族がいなければ再びギリが暴れるであろうという予測のもと、子孫に300年の平和を与えよ、という意味の、コーダイ国への申請でもあったらしい。その後何故彼らが滅亡したのかは全く不明である。
エニックス/衛藤ヒロユキ1994年12月20日第4版 33p ミグミグ族の項目より抜粋つまり
300年しか封印を保てなかったのではなく、「最初から300年という期限付き前提」の封印らしい。
正直ちょっとわかりにくい文章だが、
①当時ギリを封印する前に、300年後もギリが暴れるという予測、あるいは予言的なものをミグミグ族が立てる
②なので300年という期限付きの封印をして、子孫を守ってほしいという申請をした
って事らしい。
グルグルランド2では、
(中略)魔王ギリに300年の封印をかけたのも、300年後のみずからの滅亡を予知し、ミグミグ族が完全に滅亡する前に、今度はギリを完全に封印しようと考えたからなのか。すべては謎である。
エニックス/衛藤ヒロユキ/1995年9月4日 初版第一刷 53p【グルグルとミグミグ族──300年後の伝説】より抜粋とある。また文面ちょっと変わってんだよな。
まあ30年も前の、無印2巻程度しか出てなかったころのグルグルランド1(無印)の話をどこまで信用していいのかはわからんが……。実際3冊目のファンブック、グルグルランド+だとギリの封印は「300年しかもたないものだった」としか書いてない。とりあえずグルグルランド1(無印)のミグミグ族の要請の話を前提に考えると、その後の原作、ネコジタ谷で明らかになる、ミグミグ族の追放の話とかと矛盾するよね。
でもこれ、
多分矛盾とかじゃなくて、300年もの長い間で約束事が守られなかったって事だろうね。グルグルランド2によると、そもそも闇魔法ってのは、失敗を重ねていくと魔族に近づいて行って最後魔族になってしまう危険な魔法だそうで、それで元々嫌われていて禁止されていたらしいし。グルグルランド+でも、人々に闇魔法が恐れられていて、初代コーダイ国王が闇魔法を禁じていた前提で、70年以上かけても自分達の手に負えないので、闇魔法の使い手として迫害していたミグミグ族に助けを求めたという流れだそうだし。
グルグルはハートの魔法で厳密には闇魔法分類じゃないけど、その辺はどうも一般的には浸透してないみたいだしね。そもそもグルグルを信仰してるのも闇魔法側だし、アラハビカでもククリがそうなったように、グルグルの魔法でも悪魔になっちゃうみたいだし。
アラハビカのククリ悪魔化が、闇魔法でも問題になっている失敗魔法分類なのかはよくわからんが。運命の女神の「自分が悪魔になった方がマシ」って言葉を考えると狙って悪魔化したみたいだが、結果的には同じ事だろう。この場合は厳密な分類ではなく、闇魔法と一緒くたに恐れられるに値するかどうかのが重要だと思うし。
実際にはミグミグ族は滅亡したのではなく、大半はアスタナシアに逃れて、そうでない人らも2みたいに隠れ住んでいるって感じみたいだけど。どちらにせよ、300年の封印の時間稼ぎになにかしらの保険をかけようとしたっぽいミグミグ族の考えは上手く実行されなかったっぽいね。
この辺は多分そこまで厳密に考えられてる部分じゃないんだろうけど、当時平和を取り戻したミグミグ族と、それに関連する闇魔法の差別そのものは解けていない感じなのとかなんか妙にリアルよね。まあククリの魔法とか、バトーハの塔の話聞いてると恐れられるのもわかるんだけど。2だとククリの魔法失敗でかなり大変な事になったりしたし……。
闇魔法の失敗を続けると魔族に近づく、魔族ってのも元は人間である、みたいな設定もどこまで今でも裏設定的に生きているのかはわからないが。
グルグルの世界背景に差別ってものがあって、だからこそ「人も魔族もご一緒に」なアラハビカの街がとても画期的で素敵なもので、ここを守った意味がデカい、という読み取り方に関しては多分間違ってはいないだろう。
世界設定の重箱の隅をつつくような問題ではなく、もっと単純な話で、衛藤先生の描き方が優しすぎてわかりにくいけど。
アラハビカとか、もっと読んだ人ほぼ全員が理解して泣くような話にも出来ただろうに、まあやりたくないんだろうなぁ……。つくづく、照れ屋と優しさとよくわからないものが書きたい理想が相まって難儀な作家だなって思う。いやその作家性はとても好きだけどさ。明快にわかりやすい弟子のが有名なのもよくわかる。だって私もよくわかんねえもん。衛藤先生の物語。いや、狙い通りなんだろうけどさ……。