グルグル2、昔ちょっとだけ読んだ時、ククリのニケの呼び名も勇者様に戻っちゃってたし、まあ昔からもう設定的にニケとククリが結ばれたらそこで話が終わっちゃう作品だからしょうがないよな……(最強魔法陣が恋するハートなため)とは思いつつなんとなく読まないままだいぶ経っちゃってたが、こんなにニケとククリの関係に突っ込んだ内容になってるとは思わなかったな。

いや元々前作から結構直球で二人の恋の物語だったとは思うんだが、明らかに二人の空気が変わってるよな……。ククリもニケもずっとお互いを意識しまくってるし。コメディ調に、ククリがグルグルを使い続ける為オババにとにかく気づかって関係を保てみたく言われてたけど、そんな建前はすっかり忘れ去られ、明らかにニケが自分の意志でククリを可愛いと思うし大切に気づかっているような感じに……。

友達以上恋人未満の関係が変わる気配は一向にないものの、5巻でニケの気持ちがどうなのか、一度結論付けられたのも良かった。ここの明かし方が本当にメルヘンファンタジーの思春期恋愛として構成も演出も神がかりというか……。

グルグルはギャグを取っ払っちゃったら本当に少女漫画、というより少女漫画より恥ずかしい産物。とは一生主張してた事なんだが、前作だとそこら辺を誤魔化すためにギップルというギャグチートがいたわけだが、ギップルも主張が控えめになってるし、出て来てもそれが何?みたいなレベルでニケがもうデレデレというか。というかギップルすら「ツッコミとしてなんか弱い」と感じるようになって来た。仲間不信になる森の中で、逆にククリの心の美しさ見出してんじゃねえよ!!!

流石にそこまで気づかなかったけど、ニケってホント「理解あり過ぎる彼くん」だし、ニケのコメディもスケベも控えめになっちゃったら本当にただのイケメン彼氏なんだよな……。わざとなのか尺がないのか、10巻越えるとニケもこの恥ずかしい甘々を薄められるほどはふざけなくなってきちゃって、ただの彼氏なんだよな。元々ククリには優しいが。ニケ側がククリに比べると露骨じゃないからそこんとこはっきりしない、ってなるが。グルグル2で「ニケの事が半分わからない」などというまたグルグルらしい思春期セリフが出て来るが、まあそんな感じで。わからん言うてもアレで好きじゃないわけないんだけどな……。

グルグルって「読んだ人全員が冷めるどころかシリアスを捨てて注目、刮目してしまうクオリティのギャグでわざと気を散らしている」だけ(とかいう誰も真似が出来ない超高等技術)の作品だったから、ちょっと一歩ニケとククリの関係を進めてやるだけでこんなクソ恥ずかしい恋愛ファンタジーになっちゃうんだな……。前作までそこら辺割とやってそうでそんなにやらなかった、「メルヘン演出をこの上なく生かしたイチャイチャ」を全くためらわずにやるようになっちゃったから……衛藤ヒロユキの漫画力とメルヘン力最大パワーで……ギャグも変わらず面白いんだけど、メルヘンとニケクク恋愛に押し負け始めてるんだよな、良い意味で。

グルグルでこんなほとんどギャグで気が散らず(というかギャグさえも時に取り込んでしまって)、直球に恥ずかしくなるとか流石に予想できなかった。

衛藤ヒロユキさんも徳弘雅也さんも、弟子も流石にこのギャグだけは真似できなかったよな。っていうかこういうタイプの作家の弟子、どんだけ師匠より大成しても、どんなに純粋に作家として素晴らしくても、ギャグとシリアスの融合だけはあんま上手く行かないと思う。渡辺道明先生のアシさんが「何人かはプロになれたけど、誰も師匠の作風には似ていない、真似るとヤケドするって早い段階で悟るから」って言ってたけど、それって渡辺道明先生に限らないんだろうな。他がすごく上手いから、ちょっと滑っても致命的に転ぶことはないだけって感じがする。ギャグって難しいな。

ていうか最終回でウンコ我慢しながら告白受けてても滑らないとか、常人には無理だよな。というかそもそも常人はやる発想がない。そのせいでジャンルが変わってしまうとしても、ここでふざけようなどという発想には普通、至らない。そしてそれが正解。寒いし、ここまでついて来てくれた読者が超ガッカリするだけで誰も幸せにならんから。でも前作でこんな風に告白を描かれても、ニケククは今日もニケククなのである。

とか書いてたら、多分本人はメチャクチャ面白いと思ったか照れ隠しでやったんだろうけど「いい台詞がいっぱいあるのに、どうしてここぞという時までギャグを入れてしまうのか、とても残念でならない」という真摯なプレイヤーの真剣な指摘レビューがついてたフリゲを思い出してすごくいたたまれない気持ちになった。こういうマジレスレビューのが一番作者の心を傷つけると思う。反論できないし。やっぱ常人は衛藤ヒロユキとか徳弘雅也とかあの辺の真似したらダメだな……。

徳弘さんとか衛藤さんとか渡辺道明さんとか、伝説級に語られとるような作家って、結局上手いから伝説になれるってだけで、滑って転んで死んでる人は、死んでるから話題にならんのだろうな。死人に口なしだよ。もう数えきれないくらい擦られて大根おろし状態になっとる生存バイアスってやつだよ。
2024/06/12(水) 04:42 作品感想 PERMALINK COM(0)