衛藤先生がギャグのほぼ一切を消して挑んだ本気の意欲作。やっぱり面白い。そして死ぬほど恥ずかしい。グルグルとかじゃなくて純度の高いジュブナイルとして読んでほしい良作。ギャグでウケるとギャグ以外の一切を求めてもらえなくなるようなとこあるから大変だよな……。グルグルのギャグじゃなくてメルヘンと恋愛が大好きだった、って人には問題なく楽しめる。主人公のシュウ君はとても真面目でちょっと思春期らしく自信がなくて素敵な男の子だし、タレちゃんも結構面白い女の子。
SFに分類されると思うのだが、面倒な設定は一切抜きに不思議なジュブナイルとして大体の事がスルスル入って来るのがやっぱり上手い。流石はメルヘンの達人作家というべきか(私はグルグルのギャグで何度大笑いしてもやっぱり本質はメルヘン作家だよなあ、って思ってるので……)つかみの委員長の話でグッとこの世界に引っ張られたのをこないだのように思い出す。片恋も両想いも描くのが上手い。
確かに恥ずかしいポエミィさでいっぱいだけど、ちゃんとキャラの心理と美しく絡み合っているので綺麗なのよね……。初デートをアリスに素で例えてくるところとか本当に恥ずかしさで死ぬかと思ったけど。シュウくんの家行っておうちデートのところも死んだような記憶があるな……。
またサブカップルが可愛いんだよな、見た目怖い男の子といじめられっ子とか、歳の差カップルとか。3巻はやっぱ駆け足過ぎてちょっと一周目混乱した記憶があるけど綺麗にまとまっている。
ビビリアンがどうしてビビリアンたるのか、何故争ってはいけないのか、ここら辺のセンスが乙女過ぎて逆に乙女も書けねえもんと、メカSFが混じってんのが衛藤節って感じ。
例によってよく考えると悪人ってほとんど出て来ないんだけど、盛り上がって引き込まれるのがやっぱりすごい。
シュウ君の友達の男の子と幼なじみの女の子との話とか、シュウ君の親父さんとかに、どこかグルグルセンスを隠せないのもまたご愛敬だろうか……どちらも笑うんじゃなくてホロリとするやつなんだけど。
グルグル2すごく楽しかったけど(個人的には1より面白い)、やっぱこの路線……また読みたいな。