※唐突に始まって唐突に終わる



「最近あまり本を読むのがはかどらんのだ」
「へえ」

 アルジェンはアホっぽいのに意外と(というと酷過ぎる言い方だが、)本を読むのが好きだ。
 昔ちょっとの間一緒に旅をした時なんかにも本を繰っていたのを見たことがある。

「なんで? 面白い本に出会えないとか?」

 ミドが自分の髪の色そっくりなクリームソーダをストローで吸いながら尋ねると、アルジェンはいや、と首を振って、

「本を読んでると当然アオイがニャーニャー言いながら膝に乗っかってくるだろう、ネコが乗っかってくると当然モフモフしないわけにもいかないだろう、当然気が付くと時間が経っているだろう」
「どこが当然なのか全くこれっぽっちもわかんないんだけど」
「お前はネコがじゃれて来たらじゃらさずにいられるのか!」
「逆ギレはいやーん」

 ミドもおそらくネコがじゃれて来たらじゃらしてしまうだろう……とは思うのだが、それとこれとは話が別だ。

「膝に乗るなって言えばいいじゃん?」
「アオイにじゃれつかれないと寂しくて死んでしまいそうなのだ」
「もうそのまんま死んじゃえばいいんじゃないかなあ」

 ミドは自分の思考と言葉がトゲトゲしくなっていることに気づいていた。
 が、ささやかながらも真面目な悩みだと思って聞いていたらノロケだった気持ちを考えてくれと言いたい。
 友人をアホっぽいのに意外と本が好きだなどと心の中で考えてた時点で、既にオチは予測出来ていたのかもしれない。

「この前のバレンタインデーもアオイを抱っこしてたら唐突に手作りチョコのサプライズが口の中にな」
「チョコ食ってないのに口の中が甘ったるくなってきたんだけど?」