二人がいた。二人は二人、一人じゃない。
 二人は神さま。硬い星のイスに座って、宇宙をながめてる。
 星のイスから眺める宇宙は壮大だった。
 遠くから眺めると星がいくつも集まって川みたいになっていたり、何かの設計図みたいに並んでいたりするのだ。
 二人はそれらに物質や生き物の名前をつけていったが、やがて飽きてしまった。

「ホントの何かを作ろうか」
「楽しそう」

 二人はガスの塊を作った。実体のないそれをこねくり回すと星が出来た。
 いつも二人が座るイス。
 それを気まぐれで爆発させて、新しい星を作る。
 星に空気を乗せ、彼らが見た宇宙の川を作った。
 物足りないので星一面を海にした。
 僕たちのように座るイスが必要だと、わずかな部分に島を作った。
 たくさんの生き物が腰かけられる素敵なイス。
 海の生き物を作り、島の生き物を作り、気候を整えると人が世界を支配した。
 建物を作って集落をつくり、建物の作りが立派になり、星よりもキラキラした灯りや、鳥のようにたくさんの人が飛べる乗り物なんかが出来た。
 
「人圧倒的すぎない?」
「じゃあ減らそうか」
「うーんまあこれはこれで」

 二人は時々世界にイタズラしつつ干渉しつつ、星の生き物たちを眺めた。寝っ転がりながら、手をつなぎながら、ないしょ話をしながら。
 宇宙の果てのないしょ話を聞く誰かは、文明が発達した今でも誰もいなかったけれど。
 二人にとっては無数の星々にも、地球の友達の月にも聞かれたくない重要なことだったので、ないしょなのだ。

「……決めた!」
「きーめた!」

 二人は同時に結論を出した。

「僕たちもあの中に!」
「入る!」

 合いの手をかわすついでに結論を導き出す。

「眺めているより参加した方がきっと楽しいよ」
「どのくらい楽しいのかなあ、小さくなって眺める星や青空ってどんなかなあ」
「きっとでっかいよ、デーッカイ」

 でーっかい、と両手を上げて表現する片割れ。
 星をイスにし、世界を眺める彼らは大きい。
 気まぐれで人くらい小さくなったりもしていたから、どちらが正解ということもないのだが。

「あの中に入るときはやっぱりわたしたちも一緒?」
「もちろん! なんたって僕ら神さまだからね!」
「やったやったあ」
「でも全部思い通りじゃつまんないから、ちょっとだけ気まぐれ入れようか」

 いいかい、と片割れは言う。
 これから僕たちはあの中に入る。
 でもお互い何に変わるかはわからない。

「もしかしたら夫婦かもしれないし」
「きょうだいかもしれないし」
「大きな大木とそれを止まり木にする小鳥かもしれない」
「ヤドカリとヤドカリのカラの上に住むイソギンチャクかもしれないね!」
「でも絶対ずっと一緒!」
「いーっしょ!」

 いったいどちらが話しているのかわからないままゴチャゴチャと話し合い、結論が出た。

「いっせーのせで入るよ」
「いっせーの」
「せっ!」

 今までの思い出は投げ置き、手だけは繋ぎながら、

「また出会うまではさよならだね」
「……うん」
「……さよなら!」
「……さよなら!」

 つかの間のさよならを、二人同時に言う。

 二人がいた。二人は二人、一人じゃない。
 二人が捨て置いた、一緒に星を数え、世界をいじって笑った記憶が証明している。
 二人はまた出会うまで、一人になった。