「にゃーん、あにきのお膝にお邪魔ネコー」

 アルジェンがソファーに腰かけていると、いつものようにアオイが寄って来た。
 落っこちないように両腕でギューッと捕まえてやりながらアルジェンはニコニコとネコの顔を覗き込む。

「お邪魔ネコはオレの膝の上が大好きだなー?」
「にゃーん♪大好きー♪」
「そんなにいつもお邪魔ネコして飽きないのかー?」
「飽きにゃーい! にゃぜにゃらネコだからー」
「ウフフー、ネコなまりが多くてちょっとわかりにくいぞー♪」

 周囲に音符とハートを飛ばしながら(幻覚)、兄貴と子ネコは戯れた。

「ネコは人や犬に比べたら縄張りが狭いので、同じ場所にいて飽きるとかはないッス」
「そうかー」
「むしろおにゃじところにいると落ち着くッス、にゃんにゃー」

 撫で繰り回されて精神が七十五パーセントくらいネコになっているアオイは、しかし人の言語は捨てずに説明を続ける。

「旅をして、いつも違うところに行って違うものを見て、それでも落ち着けるのは……あにきのお膝がいつでもどこでもあるからかもしれないッスね」
「そんなものでいいとは、オレの弟分ネコは無欲なのだ」
「一番の贅沢ッスよ、にゃんにゃー」

 まさしくネコの額ほどの土地ではあるが、アオイにはここが、誰にも売らない宝であるようだ。