洗濯物を取り込もうとベランダに出たら、ヒグマが居た。ヒグマと目が合った。私は硬直した。
 ヒグマは逆にやあ、って感じに手を上げた。
 私もロボットのような動きで手を上げた。
 体は固まったままだ。

 ヒグマはのそのそと私に近づいてきて、大きなかごを差し出した。あらあらおいしそうな木の実がいっぱい。

 くれるの? 
 おそるおそる訪ねてみると、ヒグマは頷いた。それが私達の出会いだった。

 数年後。私とヒグマは一緒になった。
 今は重たいお腹をさすりながら、洗濯物を干している。

 ヒグマは日中は食べ物を探したり畑を耕したりとよく働いてくれて、夜は私のお腹をさすって、いい子に育てというように低く唸る。

 彼は服を着ないけれど、それでも洗濯物をする時間が一番好きだ。
 だって洗濯物が、私と彼の出会いのキューピットなのだから。



 書き出し.meより「洗濯物を取り込もうとベランダに出たら、ヒグマが居た。ヒグマと目が合った。私は硬直した。」