月がどんどん近づいてくる。月が落ちてくる。星の中で赤ん坊のゆりかごじみた揺れを三日月の形で維持するのに飽き飽きして、こちらにドンドン落ちてくる。

 それは流星群。私はスターゲイザー。月も頭上をまたたく無数の星のひとかけら。

 キラキラのそれは星の涙をキラン、キランと流して落としながら、どんどんどんどん近づいてくる。落とした星の涙は塩からくなく苦くなく。辛さがくるっとひっくり返り、口どけ甘い味になる。

 それは明日(あす)の子らのおさんじとなろう。青桃白緑オレンジに藤、キランキランの甘いトゲトゲ菓子を、世界中に散らばして。

 月は一心不乱にこちらに向かってくる。星の間を抜け、層を抜け、雲を抜けながら、ずっとずっと、激しく悲しく。

 やがて月は私の眼前で急停止した。三日月は星が生まれる時の大爆発を起こし、周囲にまたあんまいこんぺいとうを振り散らす。パラパラのキラキラを雨あられにしながら、三日月の中より生まれ出るそれ。


 ☆☆☆


「ルナ、会いたかったよ、ルナ」
「ああアルテミス、アルテミス」

 その美しさから星の国より拉致されたルナを、アルテミスと呼ばれた青年は優しく抱きしめた。

 辺りは幽閉するのに使われていた城の瓦礫と砂ぼこりが満ちている。それらもすべて、ルナとアルテミスの再会の感激の涙に埋め尽くされる。

 二人の恋人のこぼす涙はどこまでも甘味に満ちている。青桃城緑オレンジに藤、多彩な色に満ちている。桃色ピンクが多いのは、はてさてやれはて気のせいか。

 その夜、世界は甘い恋人達の作る砂糖菓子に包まれた。