※オレを狂わすあんちくしょうの続き



「えー、まだ最後まで手出してないの? うっそー、やっだー、ありえなーい、ヘタレー」

 アオイと最近どうだとそれとなく探りを入れられてミドに正直に話したらボロッカスに言われた。

「うー……そうは言うがな」
「言うがな何」
「可愛すぎてそんな鬼のようなことは出来ない」
「それを世間ではヘタレってんだよへっぽこ」

 注文したスパゲティーをムシャムシャやりながらズバズバとものを言うミド。たまに軽口にしてもボロッカスに言い過ぎで本当に友達なのだろうかと思う。

「そんなんしてて誰かに寝取られても知らねーぞ。おれん時みたく」
「ぶっ!? オ、オレは別に、そんなつもりじゃ」
「嘘こけ。未だにナランハちゃんにつまんないちょっかいかけちゃってさー。寝取られは冗談だけどさー」

 ミドも承知の通りに、ミドへそういう気持ちを抱いたことはないが。たまに会う友達がいつの間にかつるむ相手を見つけて楽しそうにしてたのをみて、面白くないと思ったのは事実だった。

 しかし、いつも一緒に行動してるわけでもないただの友人風情が、他に仲のいい相手を見つけたからと言って何か口出しできる事もない。それがナランハへの大人気ない態度に繋がっているのは、自分でも理解していた。けれども止められなかった。相手に落ち度がなくて、悪いやつじゃないことが伝わって来るからこそ、反発心は燃え続けた。経歴で言うなら自分の方が悪さをしていただろうと想像してコンプレックスを勝手に抱いてしまうのも、理由の一つだったかもしれない。

「……むー、我が弟分を誘拐中のゴロツキ顔を罵倒するのは、 兄貴として当然の権利なのだ-」

 そっぽを向いてビールをあおりながら、苦しい反論をするのが精一杯だった。

「ただ単にネコの子とちょっと出かけてるだけだろーが。頼んだのおれだし」

 そんなガキのような反論をしたところで、事実はミドの言う通りである。無論アルジェンとて、本当にナランハが誘拐だのちょっかいだのをアオイにかけるだなんて思ってもいないけれど──。やっぱりナランハがアオイに兄貴風を吹かせていると、理屈は関係なくムカつくのだった。

 兄貴風を吹かせるつもりもなく吹かせてる感じがまたムカつく。ちょっかいではなく、それはそれ、これはこれと言った感じに、普通にアオイに親切なのがムカつく。最終的には全部自分が大人気ないだけ、で片付くのもムカつく。

「うー……むぐぐー……あー、すまん、ビールもう一杯頼むのだ-」

 自分の抑えの効かない気持ちから逃げるように、アルジェンはビールの追加注文を看板娘らしいウェイターに頼むのだった。



「お買い物にお付き合いしていただいてありがとうございますッス、ナランハさん」
「別にこのくらい、なんてことねーよ」

 荷物の半分を持ちながら、ナランハは平然と答えた。アルジェンに用があるらしいミドに頼まれた形ではあるが、実際アオイとぶらぶらその辺を歩いて互いの用事をすませるのは悪い気分ではなかった。 兄弟が多いせいか、昔からナランハは子どもが嫌いではない。アオイも例外ではない。むしろ動物入ってるぶん構いたくなる気持ちが強いかもしれない。

「あ、アレあにきが大好きな果物!」
「走ると危ねえぞ」
「はーいッス」

 人混みの中、トテトテ行ってしまいそうになる子ネコを制して、一緒に目的の露店まで行って買い物をする。並んだ品物を見て、どれが一番いいかなと探る目つきはちょっとだけ肉食獣といった感じだ。目利きするのは果物だが。

「へっぽこのやつリンゴが好きだったのか?」
「はい! この前むきむきしたら喜んでくれたッス」
「ほう」
「リンゴ一個ぶん、ウサギの形にむいたら『アオイは器用だな、嬉しいぞ』って」
「…………」

 それはリンゴに喜んだのではなく、可愛い弟分が器用で微笑ましかったから嬉しくなっただけではなかろうか。まあ嫌いでもないからいいのだろうが。

「大体買い物も終わったし、少し休んだらへっぽこのとこに戻るか」

  甘いものの露店が並ぶ方へ、子ネコの手を引きながら歩く。アルジェンが見たらまた突っかかられそうな光景だが、こちらも借りてきたネコを無事に返す義務がある。

「ナランハさんに手引かれても歩きにくくないッス」
「ガキの引率は手馴れてるからな」
「あにきも手引かれても歩きにくくないッス! それで、ボクの方見るたびニコニコ笑ってるッス」

 そういうアオイもニコニコ笑ってて、お前みたいなガキ連れてりゃあ笑顔にもなるだろうな、とナランハは思う。自分が年の離れた相手に、自然と歩幅を合わせられるのは経験から来るものだが、アルジェンのそれは年の功というよりアオイへの気遣いの一環だろう。

「あそこでアイス食ってくか」
「はいッス!」

 イチゴーイチゴーと楽しそうにコーンアイスを食べる子ネコの横で、抹茶アイスをのんびり食べる。お茶の味しかしない、と兄弟には不評だったが、横のネコはどうだろうか。

「なつかしいばあちゃんの味がするッス!」

 一口食わせてみれば、どう反応していいかわからない返答が来た。多分喜んでいるのだと思う。

「ナランハさんもどうぞ!」

 ズイっとコーンアイスを突き出される。ごく自然にされたそれを、ナランハも何の気にかじって、甘酸っぱいアイスを楽しんだ。



「……あの男の匂いがするのだ-」
「仮にしたとして、お風呂はいったからもうしないと思うんスけど!?」

 ミドに続いて弟分にまで正論を言われた。しかしやっぱり兄貴風を吹かせた名残をこのにゃんこの身体から感じる気がする。きっと手を繋いだり食べさせっこしたりしたに違いない。ううー、ううー、と唸りながら寝巻きネコの胸に顔を埋めると髪を撫でられた。気持ちいいがこれはダメだ主に兄貴分の威厳が。

「ふにゃっ」

 理不尽なやつあたりと、オレだけの宝物だという意味を込めて 、アオイにキスをする。抵抗を見せない子ネコの口の中は気持ちよくて、ほのかにミルクのような味がした。もっとアオイを感じたくて、髪を梳きながら長い長いキスをする。

「にゃー、そんなに言うなら、代わりにあにきの匂い、つけて欲しいッス……」

 満足してアオイを自由にすると、向こうからギューっと抱きついて来た。スリスリされるとうおおおと何度もいいがたい満足のゾワゾワが湧いてたまらなくて、アルジェンはアオイを寝台に押し倒した。



 また強盗のように服を奪い取ってしまったが、服の下から現れた可愛い弟分の裸で配慮は消えた。いつも思うがちっこい。腹のあたりなんか肉が薄くて危なっかしい。

 なのに見ているとドロドロとした劣情が溢れて止まらない、この真っ平らな腹の中に思いっきり剛直を押し込んで射精して内部から汚したい。そうすぐに出来ることではないので、既にいきり立ってしまったブツを少年の腹に押し付けた。

「にゃ!?」

 初っ端から押し付けられた異物にアオイが驚いた声をあげたが、こうでもしないともっと酷いことをしそうで止まらなかった。これはこれで怖がらせそうな気もしたが。

「わー……やっぱりでっかい…… 」

 幸いにしてあんまり怖がってもいないみたいだった。何度もこうして触れ合っていたお陰か、それともアルジェンだから怖がらずにいてくれるのか。後者はうぬぼれすぎだろうかと思いながらも、すべすべしたお腹に性器を擦り付けた。

「う、うわ……ヌルヌルカチカチしてるッス……」

 嫌悪は無くとも照れはあるのか、子ネコは一度思わず目をそらしつつ、好奇心が抑えられずに青い大きな目をチラチラ腹部に向けていた。肌の感触も、アオイに見られているというこの状況も、全部が全部興奮をかき立ててしょうがない。息が上がって余裕がないのを誤魔化すためアオイに覆いかぶさり、くっつかれて嬉しいのかぴょこぴょこしている耳を食んだ。

「ふにゃ〜、あにきの、それ、エッチでやだー」
「……っ、その割に、この腕はなんだ」
「だってあにきが寄ってくるから-……ボクも、あにきにゴロゴロ甘えたいッス!」

 背中に腕を回されるだけで興奮してしまう自分も自分だが、あまり人を煽らないよう言い聞かせた方がいいだろうか。いや、しかしアオイに甘えられる回数が減ったら多分泣くだろうし。

「お前が、挑発するから……オレのここが余計に大きくなったぞ?」
「あっ……ぼ、ボクあにきにそんな失礼しないッス! あにきに甘えただけッス!」
「っ……それを……へ理屈と言うのだ!」

 はたから見たらさじをこっちに向けて投げられそうなやり取りでも、既に高ぶったアルジェンには十分な煽りだった。というか童貞を殺す勢いの恋人の甘えで、いろんなストッパーが吹き飛んでいた。既に先走りが漏れ出ている剛直を激しい勢いで擦り付け、グロテスクな赤黒い物体が少年特有の平坦な腹にヌチャヌチャ絡むのを凝視する。

「ひっ、人を挑発して! いきなりぶち込まれないだけありがたいと思え!」
「……にゃ、にゃー、そんなおっきいので乱暴にされたら、あにき大好きでもボク壊れちゃう……」

 怯えて震えながらも、想像して危ない気分になったのかアオイの声はトロリとして怪しげだった。自分でも少し思うがままにアオイを貪る想像をしてしまった。自分に組み敷かれて泣きわめくかわいそうな子ネコ。絶対にそんな事はしない! と思いつつ、そうでもすれば自分から離れるなんて絶対に考えなくなるだろうか。なんて後ろめたい気持ちも湧いて、自分の思考回路に嫌悪しながら、ドロドロの欲望をアオイの腹部に向けて放出した。

「にゃー!ヌルヌル、ベチャベチャ………!」
「はっ、す、すまん……」

 白い腹部はもちろんのこと、顔の方にまでかかってしまい、頰にくっついてしまった液体を慌てて拭ってやった。

「……えーっと、ちょっとびっくりしただけで、嫌って、わけじゃないッス」
「あっ、こ、こら、舐めなくても……!」

 拭った指先を逆に舌で拭われて焦った。こんなことをしても嫌がらないのは嬉しいが自分がされると恥ずかしい。

「はむっ……ちゅーっ、あにきの、濃くてすごい味がする……」

 最初は軽くすくい取るような感じだったのが、だんだんと指を愛撫するようないやらしいものに変わっていく。小さな口で吸われると、指なのにいけない気持ちになっていく。

「あ、アオイ、その……、もう、指はいいから」
「んんっ………」

 出したばかりなのに、こんなじゃれるような愛撫だけでムラムラ来てしまう自分が情けなかったが、欲望には勝てずアオイを再び押し倒してしまった。



「……ん、ひゃ、ふにゃー!?」

 潤滑剤を絡めた指一本でも子ネコは鳴いた。それでも下準備をしたのが良かったのか、あまり苦しくはなさそうだったが。比較的スムーズにヌプヌプ指を飲み込むそこがいやらしくて生つばを飲み込む、けれども急かして痛くするのも嫌だったから、何度も往復させてじっくりと慣らしていった。

「フー、う、うう〜っ!」

 こっちがびっくりするほど積極的だったアオイも流石にこれは恥ずかしいのだろう。今度は完全にそっぽを向いている。ただ気をそらしているだけとわかっていても、いつもアオイが自分を見つめている日常に慣れてしまった身としてはそれだけのことが寂しい。

「……こっちを向いてくれ、アオイ……」
「にゃっ、あ、ああん! あ、にきぃっ、そんなとこ、一緒にいじらないで、ひゃー……!」

 こんな好意の範囲内であろうことすら気に食わないのかと、自分の妬き性にいっそ驚く ってほどだったが、どうしてもこちらを見て欲しくて、いじってもらえず固まったままの性器にも手を伸ばして気を引こうとする。

「オレばかり気持ちよくなっていれば、弟分に愛想つかされて当然だな……こっちもいっぱい構ってやるのだ 」
「あ、愛想なんて、尽かすわけな……ああっ!」

 嬉しい肯定の通り、アルジェンが触れるだけで手の中のアオイの性器は震えた。素直な反応を楽しみながら、全体を揉むように握りつつ、後ろに入れている指をもう一本増やす。反射的に身を硬くしたのが、キツく締め付けてくるそこからわかったが、口説き返すようなアオイの数々の言葉にメロメロになった頭が、行為を急かしていった。

「にゃ! ひ、あ、あにきっ、それ、出ちゃう、出ちゃうってばっ」

 中に入れた二本の指を自身の性器に見立てて、激しく往復させる。絶えず片手でフニフニ触り続けているアオイのペニスも限界が近そうだが、アルジェンの股間もギチギチに勃起していた。この狭い穴に、こんな指なんかじゃなくて今すぐオレのちんこをぶち込みたい、でもこんなに愛しい子ネコへ乱暴を働きたくない──。

「あ、あうっ………、そんなにしたらボク、ふにゃー!?」

 出すタイミングを見計らって、子ネコの張り詰めた性器を口に含んだ。ピュル、ピュルッと噴き出した体液が雄の獣の匂いそのもので、少し生ぐさくもあるそれに危ない薬でもキメたように興奮しながら、こなれた後ろの穴を指でメチャメチャに犯す。もっと子ネコのちんちんミルクが飲みたくて、仕上げとばかりに柔らかくなったそこを吸った。

「あ、あ〜〜っ!! ん、あ、ひっん……」

子ネコは愛らしく鳴きながら、青年の口の中に精の残り汁を漏らす。一滴残らず飲み込んで顔をあげれば、よっぽど恥ずかしかったのか完全に向こうを向いてすすり泣いていた。

「う、す、すまない、こんな、泣かすつもりでは……」
「……ぼ、ボクも、あにきに触られるの気持ちい、から、でも、恥ずかしくて、よくわかんなくて、涙、出ちゃ……」

 アオイが大事だから、困らせたり怖がらせたりなんてしたくないのに、こうして触れていると、アルジェンは正反対の事ばかりしてしまう。泣かせて、恥ずかしがらせて、自分を無理矢理意識させたくなる。アオイも触れられて嬉しいから、アルジェンに微笑みかけて大丈夫だと言いたいのに、実際はボロボロ泣いて視線を逸らしてしまう。

 大好きだと正反対の行動を取ってしまう事だってあるのだという事を、冷静でない環境下でしっかり自覚するには、二人は少し幼かった。

「怖かったな、本当にすまんのだ……やめる、か……?」
「うわーん、やだー! もっといやー!」

 落ち着かせるよう髪を撫でながらこれ以上は……と譲歩しても余計に泣かせてしまう。大事にし過ぎても泣かせるということを理解するにはやっぱりアルジェンは年の割に幼くて、ただこんなに好かれている大切な宝物を誰かに取られたくない一身で小さな身体に被さった。

「……本当にいいのか?」
「うん……ボク、あにきのホントのホントの宝物に、なりたいな……」

 その言葉で全ての自制と及び腰が吹き飛んだ。 今は繋がるためだけにある穴に押し付けられていた、散々に焦らされ続けていた醜悪なペニスをグリグリッ!とぶち込む。

「かはっ! ……んぐ、あっ……いっ……」
「お、弟分の中は……ここまできついのか……」

 ペニスの入った部分全部が、ギュウギュウに抱き締められているようだった。痛みにほど近いような状態なのに激しい充足を感じる。ちんちん全体で子ネコの中を堪能したくて、少し乱暴に腰を押し付けた。

 引っかかりやすい亀頭部分が通ってしまえば後は楽なもので、アルジェンの願い通り成熟が済んで相応に大きいペニスも全部入ってしまう。性器全てを抱き込む肉洞、少し動くだけで結合部から漏れる潤滑剤と性肉がぶつかるヌチャヌチャした音、必死に耐えるアオイの喘ぎ、自制が消えたアルジェンがつけあがるのは当然だった。

「お前の……腹の中、オレの形に広がってしまったな」
「にゃっ!? あ、うっ、ん………」

 目をつぶったまま耐えるアオイを追い詰めるように、アルジェンはネコの耳に囁いた。言葉だけでは激しく乾く欲望には足りなくて、唇だけで耳を食んだ後、フカフカの耳をベロベロ舌で味わう。

「これで……っ、もうお前はオレだけの……飼いネコなのだ……」
「にゃ、ボク、あにきの……もの……?
「そうだ……だから、他の男や女に……色目使うんじゃないぞ」

 肉の穴のキツい感触、やっとぶち込んでやったという満足感が、隠していたアルジェンの気持ちを肥大化させて勝手な言葉を引っ張り出す。こんなことを言ったらいくらアオイでも流石に嫌われるかもしれない、けれど止まらなかった。

「もう、泣いても……フ、ウウッ……嫌がって、も、やめないからな」
「や、やめ……アッ、ないで……あにき好き、大好きー……」

 この後に及んでまだ好きと言う子ネコの唇に軽いキスをして、青年は子ネコの穴を堪能する。柔らかい言葉に反してキュウキュウに締め付けて来てたまらなかった。

「お前の大好きなミルク……っ、中に出してやる、からな……こっち、からもしっかり飲ん、だぞ……」
「にゃー、う、ん……飲みたい……あにきの……ごっくんしたい……」

 ここで、とかすかな痛みと大きな快楽に濡れた瞳で繋がった下半身に視線を向けて来たアオイに、しっかり意識させてやろうと押し込んだ性器を奥に擦り付ける。ひっ、と怯えたような息が漏れたが、バチバチと頭に火花が散り、繋がった部分も焼き切れそうなほど熱く気持ち良くて気遣えなかった。
 子猫の性器をしごきながら、世界一大事な存在を汚すよう、念願の腹の奥に射精する。

「お、お腹で、飲んでるっ……あ、あにきの、ミルク、いっぱい……」

 この小さな肉穴に身体中の体液が絞り取られる。あり得ない錯覚を覚えるほど気持ちが良かった。

「うお……」

 睾丸に溜まったもの全てを出し切ったところで一度引き抜くと、穴からせき止められていた精がこぼれ落ちた。
 本当に一線を越えてしまったのだという罪悪感もあったが、肉穴から漏れ出た自分の汚い体液を見ているとまたムラムラと燃え上がって来て、ちっちゃな身体を引き寄せていた。

「せっかく飲んだものをこぼすなんて悪いネコだな……」
「ご、ごめんにゃさ……」
「今度はキチンと……飲むのだぞ?」

 理不尽な事を言っているとわかってはいるが止まらなかった、こうでもして発散しないともう自分が何をしでかすかわからない。
 小柄な身体を後ろから抱きしめる形で、既に硬くなったソレを再び挿入する。

「あっ……や、これ、何か怖い、や、あにき、あにきぃ……」

 力の入らない身体で必死に恐怖を訴えるのが耳に入ったが、青年の勢いは止まらず、結局夜の間ずっと子ネコを離さなかった。




 日差しがまぶしかったが、なんとなく起きたくなかった。寝ぼけ眼で眼を開き、無意識に手が伸びた先にスベスベの素肌があって飛び上がりそうになるが、昨日の本能が逃げ腰よりも引き寄せるのを選択した。

「にゃー、おはよーございますーあにきー」
「う、うむ、おはよう……なのだ」

 なんだか気恥ずかしい。こっちはまともに顔が見れないのに、アオイの方はと言えばいつも通りこちらにひっついて甘えてきているし。
 だいぶ無理もさせたし酷い事も言ってしまったから今度こそ愛想をつかされてしまっただろうかと不安になる気持ちもあったから、安心と言えば安心なのだが。
 というかいつもよりべったりな気さえする。布団の下でしっぽがゴキゲンに揺れているのもわかる。
 裸だから距離が近いのは当たり前だとか思ったら、あれだけ無体を働いたのにまたいけない気持ちがムズムズ持ち上がって来そうになる。

「今にゃんじッスかね?」
「……窓から入る陽の差し方を見ると、昼は過ぎてるな」

 夜通しあんなことをしていれば当然だが。

「そうッスかー……」

 聞くだけ聞いておいて、アオイはアルジェンの腕の上に頭を乗せて動こうとしなかった。もうちょっとあにきにベタベタニャーニャーしてたい、とのことだが。

「ベタベタニャーニャーとはなんだ、とか色々言いたいことはあるが、あまりくっつかれると、その、また」
「いいですよー、ボク、あにきだけの宝物だもん」
「……悪い子ネコだ」

 髪を撫でればゴロゴロと幸せそうに鳴く子ネコの額にキスを落とし、情事の後の残る身体に手を這わせつつ。
 主導権を握られているわけでもないのに、この甘え上手の弟分には一生負け続けな気がした。
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