たどり着いた街ではやけにネコの声がうるさい。ニャーなんてかわいいもんじゃなくてフギャーゴとか、ンギャアアアゴとかそんなんだ。
 心無い人間にいじめられているわけでもなさそうなのに不思議である。
 代わりにアルジェンの弟分ネコは大人しい。いつもは横でニャーニャーわーわー言ってるのに今日は借りて来たネコ状態で俯いている。
 そんな日もあるかと思ったが、宿についてもそんな有様だから心配になった。

「どうした具合でも悪いのか?」
「ニャー、悪いっていうか、よすぎるというか……」
「言い訳があるか、今日ずっと様子が……」

 熱を測ろうとアオイの前髪をかきあげたところで、

「フギャッ!」
「っ!?」

 まさしく街のネコのような声をあげて、手を弾かれた。少しショックもといただ事ではないと思った。
 
「急に触ったのは悪かった。だが今の声は尋常じゃないのだ、どうした?」
「今日、ずっと身体ムズムズするんス、街までは歩けたんスけど……」
「ムズムズ? ……ちょっといいか」

 額にそっと触れるとまたフニャッと鳴いたが熱はないようだ。でも涙目でモジモジしてずっと身体のある個所を気にしている。
 またまた外でギャオーッと騒がしいネコたちと、アオイの頭とお尻で揺れるしっぽと耳が推理に拍車をかけた。
 
「アオイ、お前……発情してないか?」
「ニャ、は、はいそうみたい、ッス……」



 服を脱がして既に勃ち上がっていたソレに喉が鳴ってしまった。よく見たら下着にも少し先走りがついていて湿っている。
 
「これはキツイだろう……すぐ出させてやるからな」
「ヒギャッ!」

 硬くなったところを少し握るだけで声が痛々しい。あまり刺激しすぎないようにとそのまま手を上に軽く移動させたところで、ぴゅるぴゅると簡単に射精した。
散々にいじめられた後みたいに息がコヒュー、コヒュー言っているのに、アルジェンの手の中の性器はもう次の性行為の準備を始めてカチカチに硬くなっている。
 触れられるがままの子ネコは、逃げもしないがまた触れられるのを怖がっているように体を震わせて、大きな青い目からポロポロ涙をこぼしている。
 嗜虐心でまだズボンも脱いでいない脚の間が上向く。
 
「まだ、硬いな……自分でわかるか? ここ、石みたいになってるぞ……」
「みゃー……、にゃぎゃ、」
「ちゃんと膿を出さないと弟分の大事なところがダメになってしまうかもしれないな……」
「ヒッ!! ギャ、いじってもダメ、にゃ、ミャ───!!」

 無理矢理な大義名分を掲げて、少し乱暴に二度めの射精を促した。三擦り半も行かないうちにまたはじけたそれが、アルジェンのシャツもアオイの服を脱いだ裸体にもかかって汚す。
 そういえばアオイの服は全部奪い取ってやったのにこっちは上着すら脱いでいない。そんな自分の余裕のなさにあきれる余裕も、
組み敷いた身体の性器がまだまだ手の感触でわかるほど元気な事に気づいてすぐ霧散する。

「二回目なのにすごいな……ここからも子ネコのミルクが出せるんじゃないか?」
「みゃっ! そ、そこは~、出ない、出ないッス、な、ナー、んー!!」

 性器と同じくらい胸の先端部分も立ち上がっているのに気づいて、吸い付かずにはいられなかった。数度いじったせいきよりちいさくて少し柔らかめの感触を、舌で弄び、指でひねりつぶすみたいにして遊ぶ。
 敏感になったそこは性器と同じく感じるようで、ふと下腹を視姦すればさっき無視したアオイの性器が先走りを湛えてひくついてるのが見れた。
 今すぐにでもぶち込んでしまいたくなって、衝動を押さえつけるかわりに両手でつまんだ乳首に力が入ってしまう。

「あー、ニャ……ンニャ~っ!」

 胸への刺激でほんの少しだけピュクッと精が噴き出してまたアルジェンのシャツが汚れた。

「また服が汚れたぞ……しょうがない淫乱ネコだな……」

 目の前のいやらしい発情ネコの光景にくらべたらそんなものはどうだってよかったのだが、意識が股間に集中してしまっているアルジェンは真逆のことしか口に出せない。
 興奮で火照った身体には邪魔苦しい上着を脱ぎ捨て、放っておかれて寂しそうだった性器に再び手を伸ばす。

「そんなに出したければ好きなだけイッたらいいんじゃないのか?」
「あ、あにき、そんな何度も続けてダメ、ンニャ、ギャ──!!」

 今のアオイの性器は、触れば触るほど反応をよこすおもちゃのようだった。少し指先で擦ればすぐに本能に従って精を出す。ひょっとしたら息を吹きかけるだけでも出せるかもしれない。
 手にもアオイの身体にもシーツにも飛ぶほど勢いが強い精液は粘着質で、メスの卵子に一滴でもかければ即座に受精して卵割を起こしそうだ。
 アルジェンの膝の上に収まる愛らしい子ネコも、一皮剥けば本能に勝てないほど強くオスの務めを果たそうとしている。
 アオイのアルジェンへの愛情は傍から見ても疑いようがない。そのことを知り合いにもからかわれるほどで、自分がまだまだ尊敬されるに至らぬ人間だとしても、信頼を危ぶむ要素なんてどこにもないのに。
 ネコの本能的なそれよりも感情的で厄介でアルジェン自身でさえ持て余す、精液よりねっとりした嫉妬がアルジェンを危ういところの一歩手前まで軽々と押し出していく。

 ビュク!

「これ、後何回出るんだ?」
「ヒッ!?」

 憎らしい、0.1111111%にも満たない可能性さえ潰すように。
 
「試してもいいか? ……弟分の身体の事はキチンと理解しておきたいしな」
「そ、そんにゃの、ボクも、わかんにゃ、ニャ~~~っ!?」

 ビュル! ドブピュルルルルル! ドプッ! ドブッ! 

「もう十回くらい出てる気がするぞ……? とんだ底なしだな……?」
「ふひゃ、んぁ、んぉ、ンナ~~ッ!!!」

 念入りにもしもの芽を潰して、何も形作らないところに無理矢理精を吐き出させる。
 代わりに育ち、満たされるのは征服欲だ。世界も名誉も興味がなく、ただ一匹の子ネコを屈服させるだけで満たされる、ちっぽけで一人の青年にとっては大きくて大切な。
 ネコの地獄のような発情声が窓の外から聞こえて来る。

「弟分の仲間が外ですごい声を出しているな……お前のここもああやって他のネコとしたいんだろうな……?」

 潤滑剤を塗り付けてギトギトに光るパンパンの性器を押し付けながら、アルジェンはささやく。
 何回も責められて力なくにゃーと鳴くアオイに言葉が届いたかは怪しい。
 
「まあ、そんな機会は絶対にないがな。一生オレのだけここで銜え込んでいろ」
「んああああっ、ふにゃ──!!!!」

 愛おしい執着の対象を舐めてさすって限界まで成長したモノを、狭い体内に無理矢理押し込んでいく。
 入った部分を余すことなく締め付ける手厚い歓迎に腰がくだけそうになりながら、あくまで自分を覚え込ませるため自身の腰を押す。

「ちゃんと、お前が誰のものかしっかり覚え、ろ……今日は全部身体に刻み込んでやるからな……」
「あっ、ヒッ、ニャっ、激し……んぅ……」

 身体の奥深くまで入り込んで、激しく腰を揺り動かし、子ネコの内部を堪能する。
 ずっと射精しないでお預けを喰らっていた性器がすぐに辛抱もなく射精を訴えた。

「ここの奥にいっぱい出してアオイ汚すからな……可愛いじゃれじゃれ子ネコの中いっぱい汚してやるからな……っく!」
「ふにゃああああっ!?」
 
 押しつぶすようにのしかかった状態で、青年は息も荒く射精した。子ネコの発情に負けないくらいの精液が勢いよく噴出して、奥に奥にと犬のようにマーキングをする。
 激しい腰から下の快楽と射精の脱力感と汚しに汚した支配欲で、アルジェンはまともに息もつけなかった。
 ようやく起き上がって性器を引き抜くと、さっきまでつながっていたそこと性器の先端が汚れた精の糸を引いていた。

「まだするぞ? してもいいな? するよな? アオイ……」
「う、うん……、ボク、あにきともっとする、するの……」

 何が何でも二回目もコイツの中で射精するというような血走った目つきに、発情の引かない顔でアオイは頷いた。

 ◯

「明日はピクニックに行きたいッス」

 激しい執着心も失せ、布団でアオイの髪を撫でながらまどろんでいると、ふとそんな事を言われた。
 瞳はトロンと眠そうで、眠いのを我慢して言っているようである。
 
「どうした急に」
「んー、……なんとなくそう思って」

 眠そうな目はしかし、まっすぐにアルジェンの方を見ている。 
 髪を撫でられ続けながら、明日雨が降らなかったら行こう、何を用意しとこう、この近くにちょうどいいところはあるだろうか、そんなことを語るアオイはとうとう限界が来たように目を閉じて、
 
「ボクこうやってあにきとベタベタにゃんにゃんするのも好きッスけど、あにきといろんなところに出かけるのも大好きッス……こんな温かい春の季節は特に。一生好きッス」

 行為の際のうわ言の意趣返しのような爆弾を投げつけて、悶絶する兄貴分をよそに眠りについたのだった。
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