「あにきただいまー!!」

 買い物カゴを振って宿の部屋に入って来たニャンコロは、なにやら興奮した様子でニャーニャー鳴いている。
 カゴの中身はニャーニャー言いながらずっと振られているので中身がエライことにならないか非常に心配だ。
 
「どうどう」
「ニャー、にゃーん」

 頭と喉を撫でてじゃらすと多少は落ち着いたようである。
 アルジェンはそのままドサクサに紛れて膝の上に誘導して抱っこしようと試みたが、見てる方が虫歯になりそうな甘い罠に乗る前に、アオイは正気に戻った。

「あっそうだ! 目的を忘れるところだったッス!」
「チッ」
「あにき今舌打ちしませんでしたか?」
「気のせいなのだー」

 ネコを文字通り手中に収めるのに失敗して思わず黒いものが出てしまったのを、青年は笑顔で隠す。
 どうしようもない独占厨をよそに、アオイはさっき振っていたカゴの中からお菓子を取り出して包みを開けた。
 棒状のビスケットにチョコがコーティングされているお菓子である。

「今日はこのお菓子の端と端を二人で食べる日らしいッスよ!」
「そんなわけのわからん日があるのか?」
「ポッ〇ーゲームっていうらしいッス! あにき、やろうやろうやりましょうッス!」

 そんな棒状のお菓子一本を二人で食べたら最終的には……。
 アルジェンの予想をアオイもしていたのか、さっき沈めたのがまた昂奮した様子でニャーニャー騒ぎ出している。
 
 ──めっちゃくちゃかわいい。

「むぐ────!!!」

 考える前にチューしていた。そりゃもうバードとかじゃなくてフレンチで濃厚でフルコースなあれやこれやの。

「ふにゃ~~……うわーん、あにきまだ〇ッキーゲームしてないッス!」
「オレの弟分がかわいすぎて待てなかったのだ!!!」
「力説された! うわーんあにきのイケメン! 優しい! お目目金色キラキラ! キス魔!」
「悪口が一個も入ってないのだ! そして最後のはアオイが言うななのだー!! アオイだって「おはよーあにきvv」って朝起こす時チューしてくるのだー!!」

 牙も刃も爪もない言い合いは、しばらく続いたという。 
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