はしゃいだ村の子ども達がスモモやブルーベリーの籠を、談笑を交わすお母さん達は焼き立てパンとイチゴのジャムを広場に運び込みました。お父さん達は狩りに出かけています。

 今日はお祭りの日です。村で一番大きい青空広場は人々と御馳走でひしめき合っています。屋台も開かれ、この村一番の特産品の靴市は、他の屋台より規模が大きいです。

 腕に自信のある者は子どもでも店を開き、村の金持ちは気前よく沢山の靴を買い込み店主達に喜ばれるほどでした。

 付き合いたてのカップルが彼女の小ぶりの足にピッタリはまる白い靴を探し、どこかのおうちの奥さんが、旦那さんと子どもが仕事と遊びに不自由しない快適な靴を迷いなく手に入れます。

「遅いわねえ、獣に食われてなければいいけれど」

 狩りに出かけたお父さん達がなかなか帰って来ないので、みんなを率いて出かけて行った、村長の奥さんがぼやきました。

「そのうち帰って来ますよ」

 仲良しの奥さんが慰めた通り、キチンと村のお父さん達は帰って来ました。全員肩を落として。

「ダメだ~。ネズミの三匹でも取れたら大盛り上がりだったんだがな」
「仕方ないですよ、私達狩りは苦手ですからね」

 村長の奥さんが慰めると、ビリビリ大きな足音が聞こえて来ました。

「おーい! 愉快な靴の友よ! 今年も肉には難儀してると思ってよ、お裾分けに来てやったぜ!」

 ビリビリと広場いっぱいに響き渡る巨人の声がして、広場におうち程の鳥の丸焼きの皿が何個も何個も降ってきました。

「後で皿だけ回収に来るからよ! 仲良くやんな!」
「ありがとう、お得意さん!」

 人間のおすそ分けです。彼らの作る靴は丈夫で履き心地が良く靴擦れもしないので、人間の世界でも知る人ぞ知る名職人で、長年の取引相手がいるのです。

 小人の靴屋は皆さんもご存じでしょう。今日はそんな靴屋さんの村のお祭りの日なのです。
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