遺跡には実に様々なものが存在する。換金出来る宝石、金貨、強力な武器、防具。そして、ロストテクノロジー。
 かつて人は失われた科学文明により一瞬で大地を、空を移動し便利な生活を送っていたのだとか。


「それで、これはいったい何に使うものなんスかあにき?」


 頭の上のネコミミをピクピク動かしながら、兄貴分の講釈を聞き逃すまいと真剣だった空色の髪の少年は、話が終わるなり見つけた産物への疑問を形にした。
 潜り込んだ遺跡にあったのは何に使うかもわからない四角い黒い箱。その上に乗ったタバコを捨てる灰皿だったらしい錆びくたびれた鉄の皿。

「これは遠くの映像を映す機械……だったはずなのだ」
「でも今はもううごかにゃい」
「おじいさんの時計のようにな」
「チクタクチクタク、にゃーにゃー」

 アオイは少しの間しっぽを振り子のように動かして鳴いていたが、やがて飽きたのかご飯の準備を始めた。

「ここら辺は魔物もいないみたいッス、ご飯にいたしやしょう」
「手伝うのだ」

 兄貴はすみやかにシートを広げ、ネコは即座に弁当を出す。ごくごく普通のおにぎりとおかずだが、アオイが一生懸命作ってくれたそれは味付けが絶妙でおいしい。うまいと口に出して言えば、ニコニコ笑顔が返ってくる。

「……ここにはずっと昔、家族の団らんがあったのかもしれんな」
「ネコも交えた?」
「ああ」
「遠くの風景が見える四角い箱の前でご飯ッスか?変にゃの」
「だがなんとなくこの箱と灰皿の前で飯を食うとしっくり来ないか?」
「……そうかもしれないッス」

 兄貴分と弟分の推測にツッコミを入れる者はなく、灰皿も四角い箱も無言のままだ。
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