あにきのおめめはお宝みたい。金貨みたいに金ぴかで、光の加減でオレンジにも見える。
 あにきに抱っこされながら銀ピカの長い髪にじゃれつつ、そんなキレイな瞳を覗き込むのが大好き。
 でもこれやるとあにき顔そらしちゃうんスよね。あにきの事は尊敬してるし大好きッスけどこれだけは納得いかないッス。
 あにきだってボクのネコミミやしっぽモフモフしながらフカフカだなー、とか言ってるのに。
 
「あにきー、こっち向いてくださいッス」
「だ、だからそうじっと見られると照れるのだ! 大体オレの顔なんか見ても面白くないだろう」
「ニャー、どうして? あにき自分でたまに言ってる通りイケメンッスよ?」
「ギャー! 人の恥ずかしい発言を引っ張り出すのは悪いネコなのだ!」

 とか言いながらあにき恥ずかしがってもボクのこと抱っこするのはやめないんスよね。
 にゃんで? って前に聞いたら「恥ずかしいだけで弟分ネコとじゃれる時間を減らすのはいやなのだ」って言われたッス!
 その台詞のがボクがじっと見てるよりずっと恥ずかしい! ますますにゃんで!?

「えーいもう好きにしろ! 見たければ見るのだ!」
「お言葉に甘えて見るッス! じー、じじー」
「うぐぐ照れるのだ」
「じーじじー、ジジジジジ……ミーンミンミンミー」
「ネコがセミになってしまったのだ!」
「セミなのであに木から離れにゃいッス」
「セミだかネコだかわからない弟分がなんか言ってるのだ!」
「ミャーンミャンミャンミャンミャー」
「鳴き方かわいいけどそもそもまだ季節じゃないのだー!」
「ひと足早い夏の風物詩を愛するあなたにお届けッス」
 
 宣言通りこっちを向いてくれているあにきのおめめはちょっと潤んでた。
 恥ずかしさ最高潮?
 浮かぶ涙のしずくで輝くおめめはまた違う色合い。
 ハチミツみたいなそれに、今日はお砂糖じゃなくてハチミツを入れたミルクを作ろうかなと思った。