アルジェンのアオイへの好意は、いつも甘い。歯が浮いて飛んで行っちゃった、とは友人のミドにちょいちょい言われることで、もちろん直接愛を受け取るネコの方は甘さに一番敏感だった。甘い生地のベースのお菓子に、更にお砂糖振りかけるみたいな、そんな扱いを受けている事は。

 目が合う度に微笑まれている気がするし、甘えっ子ネコ全開で、ベッタリくっついたりニャーニャーじゃれついて嫌がられた事はない。なのに。

「にゃ、苦い……」

 さっきまであにきの反応を見ながら楽しく舐めしゃぶっていたそこから噴き出た液体の味に、子ネコは顔をしかめた。ここのところしていなかったせいか、どろどろダマっぽくなってて飲み込めない。

「む、無理に飲むんじゃない、そんなもの……」

 さっきまでかわいい子ネコの口に自分のが入っていて満足そうだった青年の顔も、一旦冷静になったらいつもの優しいあにきの顔だ。

(でも……苦い)

 そんなあにきなら、出て来るものだってみんな甘くったっておかしくないのに。口に出されたものはなんの甘い成分もなくて、どろどろして、大人の男の匂いがして──。

 飲み込んでしまうと、ああもう、と困った顔で頭を撫でられた。あにきマイスターのアオイ的に、コレはいたわり六十パーセント、残りが嬉しいといったところか。

「どうしてあにきのコレは苦いの?」
「えっ? まあそれは……そういうものだからというか……」

 頭を撫でていた手が、アオイの裸体へ滑る。

「……普段みたいな甘い顔が出来る部分じゃない、ってことなのだ」

 胴体を撫で回すその手が乱暴なのを感じて、アオイはなんとなく解答の意味を理解した。