入江君人大先生の新作や~! 夢じゃないよな、夢じゃない。



この作家さん大好き。果たして自分の読者はまだ生きてるのだろうか?と後書きでも言ってましたが生きてます。これは決して誇張ではなく、7年紙の本の出版が途絶えていたって、入江君人先生の事を忘れた事なんかなかった。

そんな入江先生の新作、一応要素としては異世界転移にダンジョン攻略、そして現代知識持ち込みと、要素だけなら今風テンプレ的なとこがある。でもそのテンプレに入江君人を盛ったら、やっぱり入江君人でしかなかったのだった。最初の虫がJK食ってるとこからもう飛ばしてんだよなぁ。むかーしツイッターで言ってた通り、ただ異世界転生、或いは転移をさせるのではなく、転移、死の直前の心理がちゃんと作品に生きていると感じた。主人公の琥珀ちゃんは、なるべくしてこの世界に転移をしたのだという感じがする。

冒頭からJKが虫に喰われている、と言ったけど、そんな感じのグロもグロ綺麗といった感じになるやわらかい綺麗な文章。全体的にアカン感じの空気はあるけど、ヒメという(人外的なズレはあるけど、琥珀本人が言ってるように琥珀よりは)「正しい」キャラとの対比もあって、なんだか魅せられてしまうし四人のチーム、或いは家族的な空気も微笑ましい。

知識チート的なアレは過度でもなく、生きのびるため、蜘蛛の仲間達(って言っていいかわからんけど)との触れ合いの為に生かされる感じで、イマドキノリが苦手な人も安心かな。異世界転移は現代知識を持ち込まれた世界の人達への影響がミソだと思うんだけど、その終盤の生かし方がやっぱり入江君人だなぁという感じ。もはやホラーやんけ。

今作は私の大好物な入江君人が描くクソ重ヤバ善人男とヒロインのラブはないのだけれども(多分この先続くとしてもない、今作のテーマは琥珀とヒメの百合だろう)、終盤の膝枕と子守歌はとても入江君人先生らしい、グロ綺麗な優しさに溢れていたと感じました。

この人の作る異世界と、自分で作った異世界を生かした狂ってて綺麗なキャラクターの考え方、そして描写はやっぱりたまらない。虫愛ずる女はおいしいと言われて喜び、学校指定の制服をひらめかせクモ糸のサンダルで異世界を踏み、姫蜘蛛を左の目に呑んで、白蜘蛛をティアラのように頭に乗せる。ここらへん本文の引用なんですけど、不気味でメチャクチャなのに綺麗なんですよね。

まあグチャグチャ下手な文章を綴ったけれども、イマドキっぽい要素にちょっと読む前不安になったけど、安定の入江君人先生らしいファンタジーでしたとさ。

今後も世界の片隅から応援したい作家さんである。復活おめでとうございますn回目。(我ながらなんか気持ち悪い締め)
2023/05/06(土) 19:50 作品感想 PERMALINK COM(0)