再読四巻目。


弥生の好きな人がわかる巻。孝弘が朝の十分黙って過ごす絆なのに対し、茂は夜に、関係も含めて誰にも内緒で一時間他愛もない話をして一緒に過ごすってのが、残酷なほど美しい、あくまで友達の男と愛してる男との対比になってる逢瀬描写だと思う。夜って言えば男女の密会の定番の時間だし、もっと下世話なこと言えば、スケベな事するのも大抵夜が定番だし、実際は中学生らしい、甘酸っぱい清い描写でも暗に恋人との違いがしっとりと描いてあるわけですな……。


私は孝弘みたいな男が好きだからコイツのほうが報われて欲しいくらいなんだが、こうも明確に、語らず描写する表現で差を描かれてしまうとなんも言えねえ〜。

もちろん弥生にとって孝弘は特別な人ではある。男側から矢印出てるけど、多分男女でブロマンスやってるような感じ。好きなのは茂だけど、孝弘みたいに相手を想って大泣きする描写や、命を捨ててまで愛してる女を庇う描写は、茂と弥生にはない。七海にもある意味恋人より通じ合ってると言われ、茂もあっちのが構図的には当て馬なはずが、二人の関係に嫉妬するくらい。「片恋なりに報われる」って話でここまで優遇が当て馬に寄ってるのも面白いよね。実際やりたかったのは孝弘と弥生の話なんだろうけど。ちゃんと茂の心情にも影響してるあたり、やっぱこの作品キャラの横の繋がりが上手い。

まあその上で、この対比的な逢瀬の描写や関係の違いは、ある意味ではとても残酷にも思える。ある意味では最高に美しいんだけど。

しかしここら辺の人間ドラマに比べると、本当SF描写は適当だよな。マージで必要最低限っていうか、ここら辺全然記憶に残ってない。作者も多分、少年少女の物語書くのに必要だからやってるだけだと思う。その上でやっぱり一芸として残す手はあったんじゃないか、ってくらい、セカイ系の空気の中の人間関係が最高なんだが。
2023/09/29(金) 00:43 作品感想 PERMALINK COM(0)