大長編群像劇。書きたいのが群像劇そのものじゃなくて、二人の男女の話というのが変わっている点だろうか。

メイン二人の心理がわからんのは、まあ解説の通りにわざとだろうな。東野さんって男子は生臭いくらいだけど女子は正直男子に比べると印象に残らないなあ、って思ってたが、雪穂は面白いキャラだと思った。男子ウケめっちゃ良いけど実際は近寄っちゃいけない系の美人が良く書けてると思う。私も雪穂はリアルで見たら苦手なタイプの美人かも。そうなっちゃった理由はまあわかるんだが。被害者の側面もあるとはいえ、普通にバケモノみたいな女だよな。

群像劇苦手だけど、コレは結構面白く読めた。長嶋監督が選手だったりインベーダーゲームだったり昭和の時事ネタも面白かった。

ストーリーも描き方も面白いんだが……敢えてそうしてるのは承知で、普通にメイン二人の心理を含めた解答編が欲しいとは思っちゃったかな……。今のままでも面白くは読めたんだが、正直ここで終わり?ってなっちゃったと言うか。メインディッシュとデザートの抜けたフルコースみたいな感じもした。上手い作家がやってるから、前菜だけでもボリュームもあるし美味しいけどやっぱりメインディッシュとデザート(メイン二人の心情と色んな仕掛けの解答がある最終章)も欲しい、みたいな。

まあないものねだりしてもしょうがないから、いろんな要素の自分用メモを忘れる前に書いておこう。作品の題材が題材だけに胸くそ悪いネタなので折りたたみ&閲覧注意。誤読や時間かけて読んでる間に忘れちゃってる要素とかもだいぶあると思う。

恨みのあるゴミクズ仇共の始末はわかるが、雪穂の腰巾着信者の友人だった江利子まで人生潰したのはなんで?→雪穂が本当に愛してるのはおそらく亮司だけなので、探偵(安らかにお眠りください)の言ってた一成にホレてた線は見当違い。多分引き立て役の腰巾着ごときがシンデレラストーリー出世するのが許せないって方向の嫉妬。江利子の似合わない聖子ちゃんカットを褒めてたのも、地味ブスの引き立て役を維持するための手段だろう(怖っ!)

探偵さんの行方→雪穂の差し金で亮司に殺されている。遺体は、亮司が泥だらけで典子のとこ帰って来た時に多分どっかに埋めてきた。亮司もあの通りのオチなので、彼の遺体が見つかることもなかろう。(探偵さんの行方探してる女子が可哀想)

刑事さんの憶測通り、雪穂の母の恋人の寺崎まで雪穂の身体を買ってたかどうか→雪穂は複数の男にヤられたと言っている。押し付けたライターも、売りをやらされた時の媚びるフリであげたと思うと自然かもしれないが、ここら辺は邪推の域を出ないかも。

雪穂の不感症&妊娠しないアレコレ→子どもの時のトラウマ?でも最初は旦那との行為で普通に感じてたらしいし……。旦那との子を堕胎したは状況証拠から間違いなく亮司の協力を得た虚言だが、堕胎した事があるのはマジだったりして……(流石にない?)子どもが産めない身体なのはガチのような気がする、されてた事がされてた事だし……。

亮司の勃起はするが射精できない体質→多分母親の不倫&雪穂の事親父が襲ってたのを見たという幼少期のトラウマのせい。

雪穂と亮司に性的関係があったかどうか→典子の手コキで誰かを思い出したらしいので、多分手コキくらいならしてもらってたと思われる。本番は雪穂のトラウマと亮司の気づかいで多分なさそう。

他の女子は卑猥写真撮っただけなのに、美佳だけ(多分亮司が)本番レイプしたっぽいのはなんでやねん→よくわからん……母親の立場になったことで、自分の母親が雪穂にしたことをなぞってしまった&目障りな存在を従順にするため?他の被害者女子と違って、義理の母と娘という構図が「特別措置」に繋がってるのは確かだと思う。

まとめてみると、敢えて書かない構成だから書いてないってだけじゃなく、直球で書くとまずいからぼかしてる要素も多そうだな、この作品……。まあオブラート抜きで火の玉ストレート表現すればロリ売春レイプ被害者女子(と、人生かけた被害者女子のナイト様)の話だからな……。上手く言えないが、このネタを通すため真相が遠回しにしか明らかにされないこの構成を選んだのかも?

この作品の唯一の勝ち組、雪穂と別れて好きな女と結婚できた元旦那&新しい奥さんだけじゃね? 後は化け物女雪穂のせいでみんな不幸に……。ある意味刑事さんも被害者の一人な気がする(刑事さん本人もそんなような事言ってた気がするけど)。なんなら亮司も雪穂で人生狂った男の一人と言えなくもない。(自分の意志でやった共犯者に、この言い方はなんか違うかもしれないけど)

自分を引き取ってくれたおばあさんと、自分の信者みたいな親友まで毒牙にかけた点は流石に同情出来ねえよ、雪穂ちゃんよう。せめて最後の亮司に対する「知りません」だけは本心じゃないと思いたいよね。

まあ探偵すらもしもべのような男を使ってぶっ殺し、本命探偵役の刑事さんからも逃げきった雪穂という女は、悪漢小説としては痛快だったかもしれない。正直ここら辺の逃げ切りっぷりを、容疑者Xの献身で読みたかった感はあるが……。(アレは探偵主役で探偵が強い世界線のシリーズものだから無理、というのは承知の上で)
2023/12/26(火) 20:06 作品感想 PERMALINK COM(0)