結婚間近のヒロイン・春菜は婚約者を何者かによって殺されてしまい、その遺体には何故か菜の花が添えられていた……。というところから始まるミステリー。
でも何故か第二の被害者のヒロインの父は墨汁で顔を塗りつぶされているという。菜の花と墨汁の意外な繫がり、そこから浮かび上がる容疑者と少し捻った結末が面白かった。寝転んで読める軽さを目指しているという後書きの作者の言葉通り、重い心情の掘り下げは敢えてされておらず、軽すぎる事もないけど重すぎる事もない感じにお花ミステリーが楽しめた。
小道具が菜の花だからか、菜の花以外にも花の綺麗な情景が適度に書き綴られていて、気楽に読める雰囲気と相まって、ミステリーというよりは綺麗な風景を見る旅でもしたような感じ。
暗すぎず軽すぎずで気楽に読めるが、ラストの春菜さんの美しい心情には少しホロリとした。シリーズものらしいが、探偵ポジションの宮之原警部も素敵な人だし、最後まで楽しく読めた。