再読。
冒頭の、少年少女が海を目指して歩くシーン。ラストシーンに繋がるくだりなんだが、この時点ではようわからん、小説の書き方とかだとやらんほうがいいとか言われがちな出だし。

にも関わらず、この始まりは再読しても読み入る。内容知ってるから、ってことではなく、よくわからんのにプロローグ単体でも雰囲気に浸る掌編として成立するような美しさがある。

リバーズ・エンド時代の橋本紡さんの文章って、歌のように詩的で綺麗なんだよね。リズムが小気味良く頭に入ってくる。だから受験シーズンの少年少女の生きづらさ、野良猫の問題、どれも辛さはあるけど、遠くから聞こえる夕方のチャイムに耳をすますように、程よく悲しいくらいで通り抜けていくというか……。すごい食い入るように一文一文読んだんだけど、そんな印象。

ラストシーンと冒頭のシーンの繋がり方は、まさにタイトルを表してると感じる。川の始まり、物語の始まりが、1巻の物語の終わり、海に出る場所と繋がってエンドマークが打たれる。この詩的なセンスは、本当この時の橋本紡のみが持ってたセンスって感じ。

この人、一般行った後はちょっと村上春樹過ぎる文体になっちゃうからな……(空色ヒッチハイカーとか、ほんとにそのまんま村上春樹)上手いは上手いし、多分この頃から影響は受けてると思うんだが……。

この本のが客観的に見たら荒削りで、今読んでもよく書けてる唯と拓己の心の通じ方や少年少女の悩みに反して、ちょっとSF要素が上手く噛み合ってない感じとかもあるんだけど、その若さ荒削りさ以上に、ラストのリバーズ・エンドの意味と反した、どこまでも透明感がある雰囲気は惹かれるものがあるなあ……。やっぱりこの作品好きだと1巻再読の時点で思った。てかファンタジー要素が(伏線自体はあるが)なんとなく唐突っぽいのはある程度わざとかもしれない。

この人コレ以降は非現実的な設定全般を嫌って、現代もの以外一切書かなくなってたと思うから。(半月以前の作品って全部電子にもならず絶版だし)可能な限り避けてるのかもしれない。そこら辺の邪推置いといても、唯が現実から目を背けていた事、一巻の時点で続刊前提っぽかった事からある程度ここら辺はわざとだろうな。

唯ってまあセカイ系あるあるの犠牲となる女の子ポジションなんだが、それだけではなくて、世界に、理不尽に自分の置かれた立場を利用して抗うところもあって、割と怖い子、強い子よな。物語って、悲劇は変えられずともこういう爽快が少しはないと、読む意味も価値もないと度々思う。

しっかしリバーズ・エンド1巻の、何もわからんのに終わっている、完成しているような満足感と美しさはは何なんだろう。まあ、ある意味では「唯」と拓己の物語って1巻でおしまいだからな……。そこら辺については続刊で触れる事にするけど。
2023/09/26(火) 05:58 作品感想 PERMALINK COM(0)