読んでから十年以上経って、ふと思い出して考えてたら急速に理解が追いつく事、結構あるんだけど私だけかな。


猫の地球儀の「海が、」。あれってつまり、日記はここで途切れている……って事よね、多分。だから最後のクリスマスとの約束なんて、最初から叶う訳なかった……。そんなどうしようもない夢追いネコの話なんだよな……。がじゃなくて、で終わってんのがとても生々しいと思う。

当時は終盤の展開があまりに苦しくて咀嚼どころではなかったし、今思い出したら思い出したで、なまじ理解が追いついて、また受け入れる気持ちもあるせいで辛い。というか読んだ当時は楽の事が辛すぎて、「なんらかの理由で連絡が取れなかっただけだ」と思い込みたかったのかも。

そんなわけないんだよなぁ! あの物語に救いがあるとすれば、どんな悲惨な方に転ぼうと、結末がどうなろうと傍から見てアホだろうと、夢を追いたければ追えばいい。その一点だけだと思う。その他一切の保障は、ない! なんならそこら辺に関しても、幽はともかく、焔には救いがないと思ってる。

楽は……本人は焔を追っているだけで、そして焔にとっては本業を放り捨てるほど実は愛されていて、幸せな女だったのかな。まぁ「楽なんか見てない焔が好き」という本人の発言を鑑みると、悲しいほどのすれ違いのような気もするが……。焔に救いを見出すとしたら、楽が思ってたように、女の事なんか見向きもしない夢追い猫として奮起するかどうか、って方向になるのかなぁ。この二匹、「楽の事を実はとても顧みていた」焔の気持ちも、「楽なんか見てない焔が好き」と思っていた楽の気持ちも、読者が知ってるだけで互いに伝わっていないのが、悲惨な結末よりツライかも。お互いにその事を伝えられる時間があったら、良くも悪くもこんなに引きずらなかったと思うし。この話もなんとも孤独な話だよなぁ。 「どこで死ぬかは、お前が決めろ」ってそんな台詞があったけど、そんな感じで、人の気持ちに動かされるような甘い真似はさせない、自分がどうしたいかは自分で決めるしかないって話なんだよな。この気持ちの断絶っぷりは多分わざとやっとる構成なんだと思うし。

猫の地球儀読み返したくなって来たけど、リバエンから立て続けにコレ読み返したら心が死にそうだな。でもコレ自分が読んだ秋山作品の中でも一番救いないけど、一番刺さるんだよな、不思議と。

「イリヤの空、UFOの夏」も鬱ラノベとすら言われてる作品だが、イリヤには浅羽がいて、浅羽にはイリヤがいた。「鉄コミュニケイション」も、猫の地球儀と同じく、メインの二人の人間関係の決裂の話だけど、二人にはそれぞれ大切な存在が傍にいる。結末がどうあれ、それらは救いだと思う。

猫の地球儀は、たまたま一瞬だけ三匹の猫の人生、猫生と天使型ロボット一体のロボット生が重なっただけという感じで、それぞれのキャラの物語はそれぞれの中で終わっているようなところがある。一瞬で壊れるコミュニティの中で、友情や愛情が芽生えて、それがその後のキャラの人生に生きる事があっても、基本的に他人は他人、自分は自分でしかない。そこが救いのない話でもあり、そこが一番自分にとって刺さる部分でもあるんだと思う。
2023/09/30(土) 15:54 作品感想 PERMALINK COM(0)