大事な事は書き残しておかないと。
描き残しておかないとな、つぐみちゃん、深景さん。

奈緒ルートで結構積極的に昔の男である先輩を忘れようとしてくれるのに、最後先輩の夢は受け継ぐのちょっと流れとしては急な気がしたんだが、深景ルートの結論や由織ルートの「花が枯れても次の種が出来る」って話を合わせて、全体的なテーマの一つが「いなくなった、死んだ者の想いを受け継ぐ」って話だからなんだな。悲しい事は忘れるけれど、次を見るけれど、大切な人を丸ごと捨てるわけじゃないってお話。

七夕伝説の二人、そのまんま=深景と主人公で彼らが生まれ変わりかなんかなんじゃないか(それなら深景さんにどうも織姫の力があるらしいことも、主人公の終始ブレない深景さん大好き犬系男子っぷりも説明がつく)って思ったが、それだとちょっと重すぎる気がするしそこら辺は曖昧か別人設定のがうなずけるような気がする。

あと生まれ変わりがある世界観だと、深景さんルートの結論がおかしくなる気がする。あの世界多分輪廻転生なくて死んだ人は想いそのものになるって話だから。それとコレとは別で、残った想いとは別に輪廻転生があるのかもしれんが、多分ない気がする。わざわざ雫のお兄さんまで深景さんみたいになったっぽい事言ってるし。

というかポエミィとか言われてるくらい&ちょっと和風伝奇の空気もあるのに輪廻転生の話全く出てこないんだな、珍しいかも。地味なAIR的な感想を聞いた記憶もあるけど、そこら辺から全然違うと思う。こっちのがご都合主義ではない。鍵ゲーが悪いというわけじゃないが、鍵ゲーのような全てをやり直すチャンスや奇跡というのは最初からない感じ。あるのはもう一度七夕伝説みたいな再会は出来るというファンタジーの優しさと、一度捨ててもそれは捨てちゃいけないものだとギリギリで気づけるかってそういうささやかな救いだけ。

まぁ花散みたいにそもそも前提が狂ってるから完逐しようがまともな救いはない、って話ではない&ライターの美しい感性のおかげで十分優しい話だとは思う。花散はそもそも復讐は俺自身のためだけにある、初美は関係ない初美にはもう一生逢えないって話だから、もうそういうこと主人公がやってる考えてる時点で、あの手の弔い話にはほぼ必ずあるようなもの、あってしかるべき救い(また別れるけれど、もう一度いなくなった人に逢える)って救いはもらえないんだよな……。多分花散の世界観の方はまともに生きていたらどこかで初美に逢える日があったんじゃないかって気もするんだよな……。冬矢がそういうキャラじゃないってだけで。

まともに生きても好きな人が生き返る話ではない(そういう話にしちゃうとそもそもオチのメッセージ性がブレる)リフレインブルーと、可能性を最初から捨てている花散ならどっちが残酷かしら……。まあどっちも別ベクトルで切ないな。両者全く読後感は違うのだが(花散はもっと鬱で精神全治一ヶ月後遺症あり)、個人的に、読み終わった後いい意味で置いてけぼりされた読後感は似ている。もう登場人物達はそこにいないのに自分だけあの想い出の海に、花散峪に置いてかれている感じは似ている。

主人公はもう悲しさは忘れたのに私は悲しいごと深景さんがまだ忘れられない、助けて。

ファンタジー要素はあるけどご都合な救いはない話、(ご都合鬱はNG)性癖だけど幻想の上でもハッピーエンドはないある種の優しい残酷がだいぶ引きずるんだよなぁ。昨日は一日中頭の中でEDの思い出の海がリフレインし続けていたよ……。
2023/10/31(火) 06:30 雑記 PERMALINK COM(0)