バレが酷いので閉じる。眠り姫(ファンタジア文庫)、猿の夢、グルグル、涼宮ハルヒの憂鬱(1巻)、くるみと七人のこびとたち辺りの核心的なバレを含む
王子様といえば、眠り姫(ファンタジア文庫)の主人公は王子様だったのか?って視点で考えるとあの作品の面白さはまた増して来るような気がする。私はヒロインも眠り姫でもなければ、主人公も王子様じゃないのではないのかな、って今思った。だって本当に王子様と眠り姫なら、結ばれたところでハッピーエンドになるはずだから。ちょうど今広く知れ渡ってる眠り姫には、キスでなく眠っているヒロインを睡姦、強姦する元ネタの話があるって知ったばかりでタイムリーだが、眠り姫の主人公とヒロインは、合意の肉体関係まで行って結婚もするんだよな。タイトルに眠り姫とつけたくらいだし、この短編集では必ずどの作品にも性描写が入ってる。そういう作者の性癖的にも、睡姦、強姦する元ネタの話の方を知らないってことはないだろう。だから、この作品は元ネタの元ネタまで丁寧に拾った、とても丁寧で悲しい、「王子様とお姫様でもない」という皮肉で全否定なのだと思う。
目覚めのキスで目覚めて幸せになれるか?って視点で様々な王子と姫の話を考えるとなかなか面白いかも。
昨日やった猿の夢は目覚めない上にまともに結ばれるエンディングもないから、まどかはノアの王子様ではない。(これは作中でも、ノアくん本人が自分だけの王子様じゃないとハッキリ語っている)。ノアくんもまどかも、それぞれ違う「王子様」で「王子様同士の組み合わせ」って視点で考えても、お姫様へのキスで目覚めない、童話の王子と姫のようなめでたしめでたしにならないのは納得で妥当かもなあ。
グルグルは直球のハッピーエンド。最初の出会いでは渋々やってきた王子様が、今度は望んで迎えに行ってキスをして目覚める。山盛りありそうなのに意外とない気がするパターン。ククリも「勇者様はククリの王子様」って言ってるしね。最初は嫌だったけど、今は楽しいという好意的な意見すら、どうも満足せずにアラハビカでこんな要求をしたのを思うと、やっぱりククリちゃんはワガママだよ。
涼宮ハルヒ1巻とかもグルグル系のハッピーエンド?ここら辺、夢の世界を一緒に体験してキスで連れ帰る辺りは案外近いかもなぁ。同じボーイミーツガールだしね。夢の世界を楽しんでいない点は違うか。ニケは一緒に同じ世界を楽しむ時も多いけど、キョンって多分ずっと(視点が)現実主義みたいな……。不思議は体験するけど。
目覚めのキスで目覚めて幸せになるのが真実の姫だとしたら、という理論で考えても、作者の言う通りにハッピーエンドともバッドエンドとも言えないくるみと七人のこびとたちはスゴイなと思う。この理論だけで言うと、他の王子様とお姫様の話の中でも頭一つ抜き出ているように思う。本当にこの作品だけの固有エンディングという貫禄がある。やってることはすごいベタで、元ネタをなぞった目覚めのキスなのに。
目覚めのキス視点で考えてもどの作品もとても面白いけど、ここまで絞った視点だと、メイン題材からして眠り姫や白雪姫であるくるみと眠り姫(ファンタジア文庫)が強い感じかな。恋の小道具に留まらず、目覚めがメインテーマまで来てるから。特にくるみは見事としか言いようがない。作中で可能性として見せた、ベタなハッピーエンドを蹴ってまでこのエンドにした意味を強く感じる。