思ってたのとちょっと違って考えさせられた。
まさか問題解決放棄エンドとは。とにかく走る走る、追われる追われる、行き場のない子どもが追い詰められるとちょっと息苦しい感じのする話だったけど、オチが意外だったなあ。なんとなくご都合主義で終わると思ってたけど。いやまあ、君の名は。がハッピーエンドでヒットしたから忘れてたけど、元々新海誠ってビターエンドの達人でそれが性癖の人だったしな。

犠牲を払って問題解決、めでたしめでたしに真っ向の青臭さで対抗してそれでいい! と投げる青臭さ&新海誠のモヤモヤを融合したような話だった。事務所のおじさんが最後捕まっちゃったりなんだりしててあちゃー感もあったけど。

でも「世界よりも大切なあの子の方が大事」「終盤大切な女の為に滑稽なほど必死こく男」というのは私の物語癖に引っかかる奴なので良かった。

しかし曇り空のようにモヤモヤっとした気持ちが残ってはしまう気がする話ではあるかなあ……。ちょうどコレを書いてる今、空が曇り空なせいもあるかしらん。

「エロゲ批評空間で中央値70くらいのエロゲのグランドエンドルート」みたいな揶揄を見たけど……その理論で言うと60点くらいのような気がするし、真エンド行けませんでしたな一個手前くらいのエンドのような印象も。

うーん、嫌いな筋書きでは決してないし新海誠も嫌いじゃないけどなんとも評価が難しいな……。君の名は。ほどわかりやすく大衆向けでもなく、雲の向こう、約束の場所や言の葉の庭(小説版)みたいに個人的に妙にぶっ刺さるでもなく。

なんとなく最後の事務所のおじさんの「世界なんてさ、どうせ元々狂ってんだから」という台詞で、言の葉の庭のヒロインの恩師の「みんなどこかがおかしいのよ」という台詞を思い出したり。(結構意図も何もかも違うけど)。何かがおかしい、壊れているものってのはこの監督さんの普遍的なテーマだったりするんかね。

テーマや結論に関しては君の名は。や雲の向こう、約束の場所、言の葉の庭(小説版)より好みのはずが、なんでこの三作ほどエンタメ的に楽しめるでも自分にとっての名作として心に残すでもなく普通に終わっちゃったのかなあ。って思ったけど、どうもここら辺の作品に比べるとメイン二人の心理描写や掘り下げがイマイチな感じするのかも。心理描写や掘り下げが全く悪いとは思わないんだけど……主人公が島を出たいって思った理由もフワッとし過ぎてるしなあ。序盤顔ケガしてんのも虐められてたんかな?って思ったけどなんかそこら辺の説明もなかったし。

挙げた三作は例え結末が苦い作品であってもメイン二人の関係ってとても特別な感じがしたのだけど、今作はバッドエンドを自分勝手さ(褒め言葉)で回避するカップルにしてはどうもあんまり……。やっぱ掘り下げがどうも模範的に、必要最低限で終わっちゃってるような……。

悪い作品じゃないけど、もし「新海誠作品見たいんだけどオススメは?」って訊かれたとしたら最初にコレを挙げることはないかなあ、って感じ。無難に君の名は。とか、私の趣味でも言の葉の庭小説版とか、雲の向こう、約束の場所とかのが良くない?みたいな。
2022/11/17(木) 15:04 作品感想 PERMALINK COM(0)