海底二万マイルってタイトル訳のが多分有名?(ナディアの引用作品表記はコレだった)な海洋冒険SF。タイプの違う男三人に好かれるアロナックス教授と、忠実なる部下コンセイユが萌えだった。でも巻末解説によるとこの作品の主人公はネモ船長らしい。



全部読み終わって本を閉じた今「いやあ大冒険だったなぁ」と感じる読後感。まさしく冒険SFって感じ。語り部のアロナックス教授に健気に付き従うコンセイユが萌え過ぎる。冒頭の迷わず海に飛びこんで来たところ、終盤の「自分が呼吸をしないでいられたら」とか言うところ、健気過ぎてちょっとホロッと来ちゃったよ。ここの閉じ込められて空気が……ってくだりの、ネッドも含めた三人の深い深い友情は泣ける。謎の潜水艦にひょんな事から招いていない客として閉じ込められて三人仲良くやってきて、固い友情が育まれたんだろうなぁと感じさせる良エピソードだと思う。

解説通り、言われてみると旅、旅、冒険って感じでストーリーらしきものってそこまでないんだよなこの小説。ちょっとうんちくがと専門用語が多くて目がチカチカすることはあったんだけど、全体的にはアクシデントや旅の中で見える景色が自分も読んでて一緒に楽しめたし面白かった。第一部の終わり方はノーチラス号のどこか幻想的ですらある死生観にも触れられて好きなシーンです。

長い長い旅の果てに謎だらけだったネモ船長の過去が見えるのは、明かすまでの段取りとして丁寧で良かった。もっと深く語ってくれた方が自分好みではあるけど。マッコウクジラを真っ向から(シャレみたいになっちゃった)攻撃するくだりはカッコよすぎて痺れた。ネモ船長、こうして読み終わった後も謎が多い男だけど魅力的な人物だな。作者の好みのタイプのキャラらしく、以後の作品にもこんな感じのキャラは出てくるらしい。

語り手のアロナックス教授とネモ船長は、割と仲良くはなれたけどやっぱりネッドやコンセイユほど分かり合えるって感じではなく、ラストもあの楽しく時々ハラハラさせられる大冒険を思うと少し寂しい感じ。ネモ船長の方も教授を気に入りはしつつも完全に腹を割って話せるというわけではなかったっぽいのは、やっぱり陸の人間と海の人間の違いがあったのだろうか。彼の諸々が謎のままだったのと、アロナックス教授とは一定の緊張感のある関係だったのは繋がっている感じがするなぁ。なんにせよ、教授の願いと同様に、私もネモ船長にはあの後は穏やかな旅を続けていてほしいとも思う。ノーチラス号にも無敵であってほしいと思う。今の時代だと科学が発展し過ぎて、ノーチラス号の優雅で気ままな旅、ミステリアスな空気ってのは成立出来ない奴なんだろうなぁとも思うけど。

ビックリするほど女っ気がない作品で、コレに可愛いヒロインと年齢考えるとめっちゃ行動的でカッコイイ少年とついでにドロンジョ一味みたいなの突っ込んで、わかりやすい、多くの人が見やすいボーイミーツガールファンタジーアニメにしたふしぎの海のナディアは色々と上手い作品なんだなぁと思った。ぶっちゃけると腐ってるからというのもあるだろうけど、代わりに男同士の友情と緊張感のある関係が華を添える原作も良いなぁと思った。
2023/07/14(金) 05:28 作品感想 PERMALINK COM(0)