村上春樹の愛読書らしい。読んだのも村上春樹翻訳。


村上春樹いわく「これまでの人生で巡り会った最も重要な本三冊」の一つ(もう二つはカラマーゾフの兄弟とロング・グッドバイ)であり、どのページを読んでも素晴らしい本らしい。実際どこの文章を取っても小粋で素敵だと思った。ジョーダンの過去回想でギャツビーとデイジーの話をする時のスカートの描写とか、ギャツビーの家のパーティの、スモモの樹の下にいる女優と映画監督とか、すごく鮮やかで綺麗。原文でじっくり読んだらもっとすごい、とはこれまた村上春樹談だけど、この翻訳を読むだけでも、どの文章も素敵。示唆や意図に富んでいるし、単純に読んでもオシャレでユーモアがあって綺麗。

内容も普通に人間ドラマとして面白いと思う。愛し合っていたギャツビーとデイジー、デイジーは結婚してしまったけれど、語り手のニックの計らいによって再び出会い、急接近し……というくだりはなかなかドキドキしたし、デイジーの旦那のトムの立場がぐらついたところは、全然空気読まないジョーダンの姉ちゃんとか、バカにしてた浮気相手の旦那がそこまでバカじゃなかったところとか、キャラ配置も文章もなんもかも完璧って感じでめっちゃくちゃ面白い。村上春樹的にはラストと冒頭が一番素晴らしいし重要らしいんだけど、私的に面白さのピークはここら辺かなぁ。終わりというか締めくくりはなんかよくある文学系のやるせない感じというか。十分上手いと思うけど、あの無情感とか。本棚の前にいた酔っ払いのじいさんが終章でいい味出すとは。

ギャツビーはどうしたら幸せになれたのかなぁ。でも「(あの二人で輝いていた)過去を再現できるはずだ!」とか言っててロマンティストが過ぎてる感じがしたり(ここら辺のちょっと自分に酔っているようなところはニックも内心指摘してたね)、デイジーの旦那のトムと激突していいとこまでいったのに、あまりにやり過ぎたせいで結局ダメだったり、なるべくしてこうなる、という感じはすごくしたかなぁ。確かにデイジーは薄情が過ぎるとは思う。読んでても最後の方は酷いなぁとも思った。でもギャツビーに全く落ち度がなかったとも思わないかな。

グレート・ギャツビーって結局どういう意味だったんだろう。最後の方で語り手のニックが彼を褒めたこと?

村上春樹いわく天才の作家らしいけど、確かに文章はかなり優れているなと思った。大衆向けの娯楽小説かも書いてるらしいからそっちも読んでみたい。
2023/08/02(水) 06:26 作品感想 PERMALINK COM(0)