表題作が有名な中編3作が収録された連作集。一つ一つの話は独立しているけれど、同じ世界で起こった三つの出来事をエイリアンのカップルが見る、という体で書かれた作品なので、一応繋がりはある。



【たったひとつの冴えたやりかた】冒険好きの女の子、コーティーが親からもらった宇宙船で大冒険に出かけて、ひょんなことから奇妙な友情をはぐくむお話。翻訳者後書きいわく、「この小説を読み終わる前にハンカチがほしくならなかったら、あなたは人間ではない」と書評家に言わしめたそうだけど、別にそこまでは……。異種族の女子?同士の奇妙な友情は良かったけど。決して悪い意味ではなく、コーティーがとてもキッパリしていて湿っぽくないから、読後感がそんなに悪くないんだよな。タイトルは実際に読んでみると、結構重い意味を含んでいたんだなぁとは思ったけど。

【グッドナイト、スイーツハーツ】コールドスリープとか利用してて若いまんまの宇宙船乗りの男が、昔の恋人に出会う話。途中までは緊張感もあって良かったんだけど、ラストがスッキリしないなぁ。個人的な感想なんだけど、コレといい表題作といい、女の子同士の友情や家族愛的なやつは素敵なんだが、男女だと女子同士に比べると……って感じがする。作者の衝撃的な死に方の方が強烈な男女関係だなって感じが……後書きの解説読んで驚いてしまった。

【衝突】タイトル通り、人間とモフモフ系な異星人がなかなか相容れず衝突する感じの話。人間側が結構な犠牲を払いつつも、それでもカタコトのピジン語で何度も何度も異性人との対話、説得を繰り返す流れが泣かせる。ここのくだりは表題作より好きかもしれない。

結構ハードな要素もあるんだけど、綺麗な比喩や感動的な異種族交流なんかで文章がやわらかい感じがしてとっつきやすかった。女性作家らしいが納得。っていうか男性作家の書いたSFって、文体が固い+専門用語が多すぎで、内容はともかく文章が若干苦手な事が多いかもしれない……。栗本薫のSFとかはサラサラ読めたしな。
2023/08/15(火) 21:48 作品感想 PERMALINK COM(0)