古き良き単巻電撃ラノベファンタジーって感じー!! 超良い意味で青臭くて主張が甘ったるい!!!


相棒の仇を探すのを兼ねた任務中、死にかけてる青年暗殺者が、雨の中倒れる直前に出会った天使のように美しい少女(こういう美しい恥ずかしい表現が男女の出会いのシーンでで出せる作家は素敵だ)と出会い、殺すな、そばにいろというわけわからん依頼をされ……。ってなファンタジー。

愛してる、みたいな表現を使わずヒロインカミーリアに一目惚れしてる(と思う)ところから、丁寧に綴られていくカミーリアとの仲を深めていく日々と、あんまそもそも殺しに向いてなくて優しいレヴンの人柄が丁寧に綴られている良いボーイミーツガール。

それだけじゃなくて、私好みの男二人に女一人の三角関係、姫にかしずく騎士の構図まであるのが素敵ー!!! お互い水面下で牽制しつつも、男同士の素敵な友情を育むビートレットとレヴンが良い。紅茶で乾杯のシーンやお弁当わけてくれるシーン、バーの会話はとても気に入ってる。レヴンは実質ボディーガードだし、二人の騎士なんだよな。(実際終盤はレヴンを騎士のようと表現してるくだりもある)

復讐ものとして読むもんじゃないと言うか、最初からハッキリそういう話じゃないってスタンスなので(読んでりゃわかる)、終盤の葛藤と結論はむしろとても気持ち良く読めた。いつしか自分の憎しみより、カミーリアの甘くてバカみたいな夢が大切になってた、ってのが地の文の心情から伝わって来てすごく良かった。レヴンが自分の意志で、美しい女の美しい夢を血で汚したくない、って思ったのを感じられた。愛してる、好きとか言うよりこういう美しい変化とヒロインを想う気持ちを浴びれる方がよっぽどクッキーみたく甘いことってあるよな。元々殺しというのも生きるために仕方なく……って感じで、最初からレヴンの心情が気取ってなくてとても素直なのも受け入れやすかったポイントか。それでいてド天然で「俺なんかやっちゃいましたか?」みたいなくだりがあるのも好き。結論を出してもジェイとの絆が最後の最後まで生きてるのも良かった。カミーリアと一緒に「復讐」を果たしてくれよな……。

カミーリアとビートの察せる関係も好きだな。どうして二人が結ばれなかったのか、ビートが騎士足り得なかったのか、最後の二人の会話で説明付けられたのも個人的に好感が持てる。コレ構図的には少女漫画的だよな……。やっぱりド天然で少女に仕える騎士とか、一人の女取り合う男二人を書いちゃう男の作家じゃないと萌えられねえ〜!! 少年向けとしては作風として古いよね……わかってる、わかってはいるんだ……!!でも性癖なんだっ!

終盤の必要以上に陰惨でない、平和的な流れがとても好き。この作者、前作「秘密結社とルールと恋」から良い意味で書きたい根底が変わってねえー! 秘密結社〜は正直荒削り過ぎて上手くはなかったんだが、その上で「でもこの作者が作品を通してやりたいことは好きだな〜」と感じた記憶があるんだが、正統派進化してるなあと思った。単純な文章力も、構成力も。やっぱり「上手くないがやりたいことはとても好き」な作者は次回作もチェックすべきだな。上手くないのに刺さるくらいは好みってことだからな。逆に上手くても嫌いと感じたら私の場合は止めた方がいい。

陰惨な内容ばっか読んでたせいというのもあるけど、良い意味での青臭さや「綺麗ごと」(作中でもレヴンがそう言ってる)を素直に受け入れられる良いラノベファンタジーだった……。学生の頃本屋でワクワクしながら手に取った、昔の電撃文庫の味がする良作。やっぱラノベでは、こういう美しい青くさいファンタジーが一番読みたいと思う。
2023/08/25(金) 19:20 作品感想 PERMALINK COM(0)