冬矢が鈴子の章で自分の着物を使った作戦を立てた事を、某氏が単なる作戦以外の意味(作品の暗喩的な)があるんじゃないか、って言ってたのをちょっと考えてみる。




やっぱり冬矢の末路を暗に示してたりとかもあるのかな。復讐の果てに狂気に喰われる的な? 或いはこの後の鈴子エンドを示してるとか(あれも鈴子にある種食われた、魅入られたみたいにも取れるかなって……)

前提として、鈴子父もおそらく妻を失くして狂った男である、親友の椿もおそらく愛妻家である、もちろん主人公冬矢もここまでの狂気に走ったのはそれだけの愛妻家であったから。という男キャラのキャラ設定は多分意味があるよね。世界観の統一性とか、冬矢との対比とか、類似とか、そういう。

人を殺して復讐を果たす、というだけでない、自分で自分を殺しているような……作戦以上の意図はやっぱ何かしら込められていそうだね……。ヒャッハー!!ってめっちゃ楽しそうな狂気顔で鈴子の事虐め倒してるくだりで、いちが「見ていて何故こんなに空しい、悲しい気持ちになるんだろう」的に言ってたと思うしね……。

そもそも花散は連綿と続く狂った情の連鎖的悲劇であって、鈴子の父も単なる元凶という訳ではない。最終章の花散峪で語られる、もう一つの世界では「奥さんを失くしたけど未だに奥さん一筋の子煩悩」的な人物として描かれていて、「環境や何かのキッカケさえ違えば、人って全然違うんだよ」というのは説明ではなく描写で語られている。(そこは鈴子、冬矢、京香も同様)。ご丁寧に、花散峪で冬矢が見る世界は、どれもただの幻想ではないという描写もあったはず。(少なくとも、幻想に出て来るヒロイン達や化野は本物)

花散のどこが好きって全部好きとしか言いようがないんだが、好きな部分の一つは、やっぱりこういう語りが一本調子でなく視野が広くて多面的なとこ。だからクリア後、陰惨な部分より初美の髪の毛梳いてやる冬矢だとか、冬矢坊に乳をあげるリンドウだとか、泣きそうな鈴子の膝に乗っかる猫だとか、そういう優しさの印象も残りやすい。

まあその、絶対に避けられない悲劇(冬矢が初美を陰惨な事件で、お腹の子ごと失ってしまう事)以外は優しい世界というのが、プレイヤーはもちろん、冬矢の心を苛んだのは間違いないから、逆にそれが地獄な作品なんだけどね……。鈴子の章で明かされた事件の全容とか、あまりにも地獄に地獄の重ねがけ過ぎて、読みながら絶句したしよくこんなエッグイ設定が思いついたな……って思ったし。エロゲーでギリギリ出来るね……って感じのほんまやべぇ話よな……。冬矢すらドン引きしてたのが救いだろうか……。



そもそも冬矢のいちに対する矛盾した独占欲と、その解決法もわかりにくいしな。

前提として、冬矢の心は永遠に初美に捧げられている。それはいちエンドを迎えた後も。しかしその前提がありながら、冬矢はいちを愛している。(初美と重ねて愛すにも、致命的な違いである顔の傷がそうさせない)

その矛盾が冬矢を苦しめ、いちに素直な行動を取らせない。でもいちが好きで誰にも渡したくない。

その矛盾を解消する方法が、おそらくいちへの「道具」扱いで最後のいじらしいエア紐仕草なんだろうね。愛する人は一人だけ、でも道具なら傍に置いておけるってそういう。

というのがわからなくて、多分単なるストックホルム症候群的な話にしか見えん人もいる。まあ実際それもそこまで間違ってないというか、冬矢といちの愛は七章ラストの陰惨な終わり通りの、ドロドロとした独占欲、殺意、暴力、共依存とあかんものにまみれてるわけだけどね。そもそもこの理論も、面倒くさい男・冬矢の屁理屈でしかないし。そもそもいちと初美は全くの別人じゃないんだからいくらなんでもそこまで徹底しなくてもいいだろとか思うし。

不器用なんだよアイツは。こんななっがいエッグイエロゲ一本分使わないと、いちに愛してるも示せないくらいにさ……。

花散の話は永久に出来ちゃうからここら辺でやめておくか。私はいつになったら花散ショックから抜けられるんだろうか……。でも未だに考えちゃうんだよなぁ、あんな生き方しなかったらいつかあの世で初美と再会できるような結末とかもあったんじゃないかなぁとか。あんな風に妻を亡くして、その前も家族を亡くしてて、そんなん出来るわけもないんだが。冬矢の一生を一生割り切れる気がしなくて困る。

冬矢が亡くしたのは奥さんだけじゃない。愛した女との間に出来た子も、初美のとこに来る前の家族も、全部亡くしちまったんだ……。えっぐ! ここまでする意図はわかるが、やっぱコレも下手したらキレてるレベルの悲惨な話や(大抵の作品はここまでキャラを追い詰める意味がないので、ただイラつく)
2023/09/09(土) 16:43 作品感想 PERMALINK COM(0)