初代ポケモン、主人公の自宅のテレビより。

「テレビでえいがをやってる! おとこのこが 4にん せんろのうえを あるいてる! ……ぼくも もう いかなきゃ!」

の元ネタ映画の元ネタ小説。映画は視聴済。



映画は男の子4人の友情ゲヘヘって軽く見たら思いのほかくらーい気持ちになったんだが、原作小説はそうでもないな。映画よか友達3人に救いないのに。不思議。

とにかく男の子達がみんなイッキイキしてんだよなぁ。下品で楽しそうでバカで……。道中でも度々終わりの救いのなさは示唆されているのに、それでも悲しいより楽しい、面白かった気持ちが強かったかも。

スティーブンキングが前書きで言った、「みなさんにも気に入ってもらえますように」という願い通りというか。

映画で結末は知っているが、それにしてもコイントスで唯一表が出ちゃったゴーディのシーンはわかりやすく示唆的よなあ。そしてそれは幸運ではなく、仲間たちのように儚く楽しく死ねなかった、生きられなかった悲しみのが強そうだとも。

「ことばは有害なものなのだ。(中略)愛というのは、甘ったるい詩ではない。愛には牙がある。嚙みつくのだ。その傷は決して癒やされない。無言であること、ことばを組み合わせたりしないことが、そういう愛の傷をふさぐ役目を果たす。(中略)わたしが言うのだから、信じてくれていい。わたしはことばで生計を立てている。だから、それがよくわかるのだ」

並の作家が言っても寒いけど、スティーブンキングが言うとマジでかっけえな、このくだり……。

描写は細やかだし恐ろしいけれど、どこか綺麗で儚くて優しい。前読んだミザリーも面白かったけど、この切ない路線のが好みかも。

もう一個のマンハッタンの奇譚クラブも切なさがある。スタンド・バイ・ミー同様救いのない結末でグロテスクなのに、母親の死に様が美しくさえあるのはなぜだろう。いかにもドラマティックで悲惨なのに、私みたいな面倒なオタクが不快とキレずにただ静かに見守れる、天才作家ってすげーや。

スタンド・バイ・ミー、映画は見た後憂鬱になっちゃってあんま好かなかったけど、原作小説読んだらますます好かなくなったかも……。

確かに原作小説にも「昔は良かった」「あんな楽しい日々は二度とこない」という感傷的な要素はあるけど、マンハッタンの奇譚クラブも含めて、この本の登場人物って、息の根が止まるその瞬間までとても生き生きと動いていて……悲しいばっかじゃないと思うんだよね。

映画は「もう戻ってこない青春」という陳腐に寄り過ぎて、原作の良さが出てないなって思う。原作は長すぎるし、少年達の下品な会話とかも含め、映画で拾えないのもわかるんだけど……。

好きな作品(ポケモン)のイメージ風景は間違いなく映画の方だと思うし、好きな作品の好きな作品、元ネタの一つは愛したいとこだが、やっぱり映画の方はあんまり個人的には好きじゃないな、しみったれ過ぎてて。映画のがもう少し救いがあるのにね、そういう感想になった不思議。

スティーブンキングの小説ワールドの方は、この作品を読んでますます好きになったかも。
2023/09/15(金) 19:02 作品感想 PERMALINK COM(0)