ダイの出生の秘密~竜魔人化バランまで。



なんか「ダイの秘密」って原作の「ダイ、出生の秘密……!」にくらべるとイマイチカッコよくないサブタイ。アニメ、幼少ラーハルトとバランの出会いが少しだけど動画でちゃんと描かれてたり、良い改変もいくつもあるんだが、バランの「女を殺したくはないが……」の削除といい、尺や時代の問題もあるのだろうけど、三条先生の絶妙にカッコイイ言語センスがショボくなってて残念なとこがちらほらあるなぁ。

それはともかく、私の好きなバラン父ちゃんとソアラ母ちゃんのお話。今聞くとソアラ母ちゃんの私「達」を置いて行かないで……ってかなり色気のあるセリフよな。無骨な男だけどバランがする事してしまっていた生々しさも感じる。(気持ち悪い感想)。バランの代に起こった例外がダイという子を成したことなわけだが、人間の心と、同じ色の血の通う身体を持たせた以上、いつか起こり得るバグだったと思う。

バランが人間を決定的に憎んだ理由のくだりも、国を爆破したキノコ雲を背景に愛する女の遺体を姫抱っこしてる漫画の最高の構図ほどの美しいセンスはなかったかなぁ。まあキノコ雲はやばいのかな。あの怒り、妻への愛情の裏返しを強く感じて好きだったんだが。私がそもそもアニメが好きじゃないだけかもしれんが、やっぱアニメ見ればみるほど原作の見やすくてカッコイイ構図の良さを感じてしまう。

しかし自分が頭握りつぶされて死にかけてる時に、「魔法力がカラのおれよりヒュンケルのがダイの役に立つし、お前が死んだらマァムが悲しむ、アイツの涙だけは見たくない」なんて言えるポップ、カッコイイが過ぎるんだよな……。そこで恋仇が片付いてラッキー、って言えないところがポップの優しさ、本当はヒュンケルを仲間と認めている気持ちの表れなんだろうね。マァムはヒュンケルと結ばれるべきだ、なんて引いてしまう勇気のなさも入ってるかな? ヒュンケルがラーハルトの育ちに泣くのはわかるが、ポップが泣くのは純粋に彼の純朴な優しさによるものだよな。ヒュンケルのように共感が出来る感じではないだろうしね。

考えてみるとポップ、「恋仇だからヒュンケルを目の敵にしている(素直になれない)」だけで人間を殺してたやつ、魔族に育てられたやつ、元魔王軍とかそういう風には嫌ってないからな。根っこが純朴で良い子なんだが、序盤は弱虫だからそこがあまり注目されなかったんだな。もし恋仇じゃなかったらもっとダイに接するくらいフランクだったのだろうか……?

動画の動きはかなり良いと思う。ED曲も今のがシリアスな本編に合ってて好き。OPの緊張感のなさはなんとかならんかねぇ……。

鎧の魔装もヒュンケルに引き継がれ、顔が良く見えるイケメン槍戦士が爆誕。次はポップのメガンテ回か……。

そういえば牢屋の檻越しにレオナがダイを抱きしめるシーンってやっぱチューしてんのかな……。この檻越しに抱きしめる、っていうのも、レオナと記憶を失くしたダイの壁を表してんだろうな。うーん、やっぱダイ大って演出がすごくロマンティックだ。三条陸先生が脚本家もやってるのもあるのかな。漫画専門の人以上に、すごーくロマンティックでドラマティックな場面が上手いよね。稲田さんのわかりやすい、伝わりやすい作画も相まって。

レオナ姫の檻越しの抱擁、とても良いシーンだが、「本当のあなたは勇気があってまっすぐで明るくて、びくびくしてる今は本当じゃない」っていうの、半分は間違いな気がする。ダイは別に戦うのが好きなわけじゃないし(これは最終決戦、最後の最後のガチンコバトルでの悲痛の叫びでも良くわかる事だろう)、この今の記憶喪失状態の純粋さの上に、勇気や優しさ、明るさ、強さが生えているというのが真実なんじゃないかな。まぁここら辺の本質はちゃんと終盤、レオナ姫本人が気づいて仮説(という形だが、真実であると思われる解答)にたどり着くわけなんだけどね。この純粋で、ナイフすら怖がるような優しくて弱い少年、というのもまたダイの真実、一面であるわけなんだなぁ……。
2023/09/16(土) 10:09 作品感想 PERMALINK COM(0)