ヒロインに他の男の影が濃いの、良い意味で昔のエロゲ&elfのゲームって感じ。
草笛で奈緒ちゃんの演奏の才能を表現するの、素朴なメルヘンセンスかつ綺麗だなぁー。この作品書いた人は相当澄んだ感性を持ってるんだと思う。そっから大切な人との思い出に繋げてくのも上手い。

猫の名前は笑った。兄弟猫が仗助で承太郎、息子がジョルノ。カモメがジョナサンってのは、そのまんま「かもめのジョナサン」っていう小説からだと思うんだが、こっちもジョジョネタが入ってるんじゃないかな。第一部の主人公がジョナサン・ジョースターって名前だし。これに引っかけて終盤奈緒ちゃんがカモメと一緒にトラウマを克服した演出があったのが、王道だけど良かった。かもめのジョナサン、割と難解な感じで当時読んだ時よくわかんなかったからもっかい読み返したくなった。昔、好きな作品に出て来たのをきっかけに読んだんだけど、コレ出す作品、なんか感性が合いがちなような……。原作自体はあまりよくわからなかったんだけどな。

全体的にちなつルートより面白かった。お互い大切な恋人を亡くした同士、丁寧にイベントを重ねて惹かれ合っていく流れが良かった。

このゲーム、面白いのが、他の女を攻略すればするほど、主人公の中でもプレイヤーの中でもみかげさんの影が濃くなっていく構成になってる事。変に引きずることはなくて、主人公も落ち着いた男で、みかげさんの想い出は今一緒にいる子と結ばれる為の糧になっているって流れにはなってんだが……奈緒ちゃんが序盤の方で言ってた「もう過去の人ですよね」って問いかけに対しては「いやー、あんま過去になってないよなあ」と返事したくなる感じ。私もみかげさんの影を求めて、次のルートに行くんだな……。

エピローグに一切奈緒ちゃんが出てこないのは思い切った構成&このゲームが丁寧に各ヒロインルートの恋愛物語を描きながらも、最終ルートに的を絞った作品なんだろうな、と感じさせる。あくまでラストはみかげさんを振り切るように思い出の品を捨ててるんだけど、奈緒ちゃんの事待ってるって言ってるんだけど、ちなつルートから続く「to be continued」で締める流れと合わせて、まったくみかげさんを忘れられていると思えん。

そしてラストのみかげさんの手紙のくだりは少し切なかった。号泣って感じの作品じゃないんだが、キャラの心理の描き方のしんみりする感じが癖になる。主人公の叫びがエコーかかってる演出いいなあ。

若干みかげさんに的絞ってる構成の犠牲っぽさはあるんだが(エピローグにいないとことか)、奈緒ちゃん自体は初見からのギャップがある深みのある女の子で良かった。初めて主人公の兄ちゃんの前で髪を降ろしてくれた時とか、昔のエロゲらしい細やかな髪の仕上げも相まって色気とグッと来る感じがすごかった。破れた写真のくだりの演出とか良い。今見ても演出が良いゲームだと思う。流石elf、n回目。

そんなにちゃんと作品プレイしたわけじゃないんだけど、elfのゲームのヒロイン達って見た目は美少女ゲーヒロインしてても、あんま内面のキャラクターが画一的じゃないというか、ちゃんとどっかにいそうな女性って感じがするんだよな。そこら辺が、知名度に反して案外好み分かれる部分な気もするが。ちなつルートもそういう空気はあったんだが、こっちは特に失恋と新しい恋がメインテーマって感じで、全体的にエロゲというよりは一般文芸のちょっと切ない大人向け小説みたいな空気のルートだった。

なんというか……美少女とキャッキャする恋を描いているようで、その実ずっと失恋を描き続けているかのような構成が、独特なゲームだな。次のルートがどうかは知らんが。
2023/10/14(土) 19:43 作品感想 PERMALINK COM(0)