蜻蛉海岸(マジで何回も言うが、この作中の地名のちょっとしたネーミングセンスすらも大好き)から相変わらず帰ってこれない。



やっぱり私も深景さんと一緒に行きたかったな。って思うんだけど、多分あのまんま一緒に行くエンドだったら「あー性癖だな~」「普通に好きだな~」で終わっちゃったのは間違いないんだよね。そんな感じの作中七夕伝説に引っかけたオチで終わったら、まあ嫌いにはならないが、反面こんなに心から、感性の澄んだ良い話だ……。なんて感銘を受けなかったのは間違いない。このゲームが埋もれながらも一定の評価感想があるのはここのオチまでがブレないからだと思うしな。

そもそもリフレインブルーの愛ってもっと大きな穏やかなもんで、相手を縛り付けるもんじゃないから……。死者が生者を連れてくようなホラーじゃないから……。(連れて行くってなると、相互合意だろうと綺麗に描かれてようとホラーっぽくなっちゃうよね)つぐみちゃんも抱いた責任取れなんて言わないし、由織さんも(そうとは決して言わないが)絶対主人公の事ずっと覚えてて幼少から恋心をそのまま持ち続けてた女なのに、それを明かす事もなく、最後も一緒に来ないしあのままビターエンドでもおかしくない空気作るし、雫ちゃんも交流は途切れてないが、エピローグだと会うの久々っぽいし。奈緒&ちなつは他の女子と比べたらおにーさんと結ばれてやる!という積極性が見えるが、彼女達も押しかけ女房的な感じにはならない。奈緒ちゃんなんかあんなアタックかけてても海外留学するし。深景さん以外のヒロイン全部を使って、「愛は押し付けるものではない、深く深く想う事」というのが表現されている。


恋愛シミュレーションっていうか、「一つの愛の物語」だよな、リフレインブルー。実質一本道なのもそうだけど、描かれる恋愛のそれが、描きわけがなされながらもテーマが統一されてるような……そういう意味で。

このゲーム、各ヒロイン達にテーマ曲があるんだが、タイトルまで各ヒロインらしくてかわいい。


Let's be Cheerful!(ちなつのテーマ。元気に行こう!みたいな意味でらしいと思う)
乙女心と夏のそら(奈緒のテーマ。複雑で切ない女心が夏を通して丁寧に描かれる彼女のルートに、女心と秋の空をもじったこのタイトルがつくのは妥当かな)
朝顔さんにおはよう(由織さんのテーマ。朝顔にさん、ってつけるのマジ由織さんらしい感性だと思うし、彼女は曲名すらも可愛いんだよなぁ……)
カバンいっぱいの色鉛筆(つぐみのテーマ。つぐみらしい元気いっぱいの曲だが、おにーさんが褒めてくれた絵、そこから来るエピローグ的に重要であろうアイテムの描く道具がタイトルについてるの切ないね……。)
Rainy Eyes(雫のテーマ。幼少の頃泣いてばかりだった事、今も全然笑えない子である事、出会いがツユクサの朝露との共演だった彼女にはピッタリなタイトル。泣きながら寝てたCGも印象的だろうか)


深景さんはハッキリとしたテーマ曲はないようだが、敢えて言うなら深景さんとの思い出を振り返る時に流れている「憧憬(しょうけい)」辺りが該当するか。憧憬ってのはあこがれって意味なので、年上の女に恋い焦がれる主人公という構図的にはピッタリだな。

ギャルゲーって女の子に押せ押せ押しかけ、病むほど愛されでなんぼなジャンルだと思うんだが(コレもやり過ぎれば毒とはいえ)、そういうフィールドで押し付けない愛を描いちゃったの素敵だけど業が逆に深い。まぁ私も深景さんが刺さって抜けないご覧の有様の通り、そういう押し付けてこない淑女キャラのが残って消えないとこあるんだけど。Likelifeの椿がなんで十年経っても忘れられないかというと、コレも「立場的に誰よりも主人公の事が大好きなのに、その立場的ゆえに結ばれるわけにいかない」というのを貫くのがトゥルーエンドの彼女だからだし。

最終ルートで現象の理由付けというか説明付けが少なすぎるのはやっぱり惜しいと思うんだが、「なんで最後だけ七夕伝説の結末と袂を分かつオチなのか」、というのをいちいち説明しない、伝説の織姫とは違う、深景さん視点の独白があるのみなのはとても良いと思う。ここら辺はやっぱ匙加減が難しいとこだな、このゲームも言わな過ぎて惜しい部分もあれば、いちいち言わないから素敵だと思う部分もやっぱり混在してるとこがあって……。私を思い出して!なんて絶対いわないし、お家騒動も全く語らない、その理由が「今を大事にしてる」という挙動のみだけで表現される由織さんとか、明らかわざとやってるとこもあるからなぁ。
2023/11/07(火) 20:20 作品感想 PERMALINK COM(0)