今回は全体的に好みの話が多かったなー。



今回は全体的に異種族嫁を迎える男の話ばかりで統一されてて楽しかった。「柘榴の花」と「月の微笑」の物語の王様、ずっと喋らないお嫁さんに自分の手からご飯食べさせてあげてすごく可愛がって、頑なな心を最終的に開いて、他の妾とか全部放り出すレベルにハマっちゃって可愛い。子ども作ったのも柘榴の花とだけだし。母子の話だから王様は退場早いんだけど、お嫁さんの秘密を聞いて愛情がガッチリと固まる描写とか、千一夜物語らしい上手くて美しい表現だったなあ……。月の微笑の方も、お母さんの故郷の飛びきり可愛い娘を嫁に貰おうとして色々あるんだけど、父子二代、(比較的)一途な感じが萌える。初めてお嫁さんと月の微笑が相対した時の表現とかすごく綺麗だ。ちょっと意外な展開もあるし、この話は本当に楽しかった。

「ハサン・アル・バスリの冒険」も一途な話。巨人の女に性的にオモチャにされたりとかはあるけど。ハサンを助けてくれる老女がすごくいいキャラしてるなぁと思ったし、彼女も報われるオチなの良かったなあ。ハサンの姉貴分になって色々助けてくれる薔薇の蕾の姉ちゃんもいいキャラしてて、シャハラザードの妹のドニアザードが、この話のメインヒロインの耀(かがよ)い姫と一緒にお嫁さんにならなかったのを残念がっていたが、そこはちょっとわかる。昔の金持ちとか王族の話だから、お嫁さん普通にいっぱいいるのがデフォであんまイヤミもないんだが、この話はハサンが一途で、耀い姫以外の女に全然なびかない(義理の姉貴分が七人も出来るのに、全然肉体関係解かない、家族愛止まり)し、嫁のためにはるばる遠い島まで旅に出る話だから、最初の柘榴の花同様、千一夜物語にしちゃあ珍しいタイプの話かもね。しかし巨女にオモチャにされるシーンもあるの、本当千一夜物語は性癖の宝物庫やなぁ。

最後の短い短編の連続の章の「歴史的な放屁(おなら)」は、くだらないようで少し切ないかもなぁと思った。昔の男の人が、こういうくだらない事で意地張って逃げてしまうのは、なんかリアルっちゃぁリアルだし、逃げた先でめっちゃ出世したとはいえ、そのくだらない見栄で幸せを逃しちゃったってのは、結構教訓的なように私には思えたかな。多分結局逃げても汚名は消えないし、堂々として開き直った方が幸せになれたって話だよね。っていうか普通にこの話は嫁さんも可愛そうだしなぁ(描写はないけど)

今回の巻は特にアタリって感じで、読んでて楽しかったな。
2023/11/08(水) 19:21 作品感想 PERMALINK COM(0)