新海誠作品でそういやコレは見てなかったなぁって。コレ二十分しかない超短編だったのね。
うーん、雲のむこう、約束の場所以上のゼロ年代セカイ系。ロボものなんだなコレ。

新海誠ってほーんと距離で隔てられた両片想い男女(ほんで君の名は。以前は全部悲恋)が性癖だよな……って感じ。これを本当に何度も何度も何度も擦るの、なんかそういうツライトラウマ体験でもあるのかな?って、そういう男視点の悲恋が性癖の私でも穿った目で見てしまうレベルだわ。でも私はゼロ年代セカイ系に囚われたオタクの亡霊。そしてこの頃、具体的に言うと君の名は。以前の新海誠悲恋センスに惹かれてしまうオタクって事で、このポエミィな短編にも強く惹かれてしまうのだった。

メール一つ届けるのに、ヒロインと距離が開くにつれ1年、8年とどんどん時間がかかるようになっていく。そんな救いなら多分ない方がマシだと思う。何故って、希望を捨てられないから。

新海誠のヒロインって、そんな気はないけどすごく男を振り回すし人生を支配するし壊しにかかるよな。ファム・ファタールっていうの?そういうふうに、合意で叙情的に一人の女に人生ぶっ壊されるのが新海誠と各作品の男の達性癖だから、ヒロイン達のせいってわけじゃないんだろうけどね。男の方が勝手に壊れるだけだと言われればそうだし。


作品としては新海誠の黒歴史として有名な「星を追う子ども」より若気の至りっぷりがすごいと思う。アガルタというワードがほしのこえにも星を追う子どもにもあった辺り(そしてどちらにも星がタイトルにある辺り)、星を追う子どもは単なる劣化ジブリではなく、多分ほしのこえのリベンジも兼ねていたのだろうな。実際はほしのこえより痛い作品になっちゃったが……(小説版と合わせると、むしろ私はかなり好きな部類の作品だったりするけど)

しかしやっぱり、君の名は。以前の新海誠作品の、距離や時間に隔てられた両片想いの男女の心が通じ合う瞬間は本当に私の性癖を狙い撃ちするし、この上なく美しい。どうしてこの突き刺さる感覚が、君の名は。以降自分に対しては消えて無くなってしまったのだろう。嫌いとかではないんだが、なんか刺さりきらないとこあるんだよな。


いやわかってんのよ、客観的に見たら君の名は。以降のが上手いし万人受けするし良く出来てるなって。ほしのこえのが今見ると痛い作品だろうって。携帯のデザインからしてもう古臭いし。わかってんだけど、ほしのこえのラストほど、君の名はや天気の子やすずめの戸締まりのハッピーエンドがなんか刺さらんのよ。気取ってんじゃなくて純粋な感想として。

何度もこの日記で言ってるように、私がゼロ年代セカイ系悲恋ものの亡霊なだけなんだろうけどね、結局のところ。客観的に見りゃあほしのこえのがわけわかんないポエムロボットものだし、オチも多分バッドエンドだし(おそらく、新海誠作品の中で一番救いがない)。それでもやっぱ、この切ない、時間も距離も連絡ツールさえも関係なく通じ合ったのであろうラストは、本当に綺麗だなあ……って思った。

小説版で色々補完したい。雲のむこう~のノベライズ担当はなんかそりが合わない感じの人だったが、違う作家みたいなんで。
2023/11/11(土) 10:14 作品感想 PERMALINK COM(0)