アンパンマン、まーじでカッケェ……。
アンパンマンにわかだから知らんかったのだが、落ちて来た星の生命エネルギーでアンパンマンたちの町が生き物の住める緑豊かな場所になった、って設定&そっからの星祭り(感謝祭的な)の流れがスゲーメルヘンだな。いやアンパンマンがジャムおじの作ったパンに落ちて来た星で出来た生き物とは知ってたけど。バイキンマンはばいきん星の卵+雷のエネルギーで生まれたってのも初めて知った。

冒頭でバイキンマンがみんなで作った星飾りをテーブルごと奪い取っていくのを見て「割とガチめの酷い悪だな」って思ったけど、みんなの呼び声ですぐ駆けつけてくるアンパンマンがイケメンだからストレスが溜まらない。

っていうかアンパンマンイケメンだなぁ。波間で揺られている人形のドーリィが海に叩きつけられる前にサッと姫抱っこで受け止めたり、命を貰って立ち上がった瞬間転びかけたドーリィを即受け止めたり、いちいち挙動がイケメンなんだわ……。

生き物一年生、って感じで、花の匂いやご飯の味に感動して、好き勝手遊び回るドーリィは困った子ではあるけど、イキイキとしていて憎めない。ちょっと頭のいい赤ん坊と思えば仕方ない挙動だしね。

しかしドキンの奴、まーたホラーマンと空飛ぶ機械に乗ってデートみたいな事してやがるな。なんだかんだこの辺仲いいから勘ぐっちゃうぞ。ドキンの奴は相変わらずなんだが、気の強いドーリィと女同士の大ゲンカするくだりは本当にイキイキしていて楽しい。

ドーリィとアンパンマンは命の星から生まれたってところに共通点があるけど、誰かの為に動くアンパンマンと、好き勝手遊ぶドーリィとで正反対の対比になってて面白いな。ドーリィもだんだん好き勝手が面白くなくなって来て、葛藤する流れが良い。アンパンマンマーチの歌詞に引っかけた「なんのために生きるのか」という深いテーマ、そこを語るロールパンナちゃんとの会話が心に残る。

アンパンマンの生きる理由は「誰かの為に戦って働いて、心が温かくなった」初めての体験からずっと変わらない。ロールパンナちゃんは生きる理由が「わからない」。ロールパンナちゃんも根っこは善なんだが、悪の心も植え付けられてて、自分をコントロール出来ねえから、アンパンマン(とその仲間達)みたいに生きられねえんだよな。その「本当はヒーローみたいに生きたいけど、そうもいかない、自分には出来ない」というのは自分らにも当てはまるような気がして、だからこそここら辺の会話は深いのだろうな。

しかしアンパンマンの劇場版って子ども向けでも終盤毎度結構怖いよな。今回も仲間達は全員カビ化したり拘束されたりで無力化されるし(ここのカビ化で性癖壊れる子どもがいそうな気がするな……という邪推)。子ども向けでも子供だましではないってことだが。

今回普通にアンパンマンが一回死ぬから、わかっていても怖さがある。仲間も無力化、愛用のマントさえも破けても、ドーリィの盾になって絶対に引かないアンパンマン、マジで宇宙一カッケエアンパンだなって思う……。

アンパンマンの優しさに感化されて、誰かの為に生きる、行動することを悟るドーリィのくだりは普通に泣けた。最後はメルヘンハッピーエンドだけど、考えて見ると最初にウサギの先生が「命の星は伝説ではなくて、今でも時々降って来る(アンパンマンがそもそも生き証人)」って伏線もちゃんとあるんだなあ。うーん、上手い!

子ども向けの優しいメルヘンとしてハッピーエンドになるけど、テーマとしてはむしろ重い部類。評価の高さもうなずける。

ドーリィの声優が本業じゃねぇからちょっと棒読みくせぇのが残念だな。十分感動出来たし良い話だけど。劇中歌「ドーリィのいのち」も女の子らしいメルヘンな曲で素晴らしい出来。終盤の男性コーラスアンパンマンマーチも、頑張るアンパンマンと合わせてカッコイイ。

アンパンマンマーチの歌詞の美しさと深さ、そして歌い手によってガラッと印象を変える多面性に気づかされた映画だった。

アンパンマン、おもっしれぇ作品だなぁ……いやこの前ばいきんまんとくろゆきひめ見たら、たった20分で大人が見ても切ない恋物語に仕上がっててビビったし、めっちゃくちゃ長寿作品だし、クオリティ高いのなんか当たり前なんだろうけど。改めて見るとホント面白いなと思った。

そしてアンパンマンが死ぬほど好みの超絶光のクソ重イケメン男な事に今更気づいた。考えてみたら、いくらジャムおじが新しい顔作ってくれるって言ったって、痛覚ないっつったって、ためらいなく自分の顔ちぎって他人に与えるヤバ男が私好みじゃないわけなかったわ。

ドキンとはあんまり男の趣味が合わないなあと思った。食パンがあの世界でイケメンなのは認めるけど、私は女にド天然紳士のアンパンマン一択だわ……。テーマは深く、アンパンマンにメロメロになる映画だった。私もアンパンマンに庇われたいし姫抱っこされてえわ……。

正直に言っちゃうとこのストーリーの流れならドーリィは生き返らない方がメッセージ性に更に説得力が出た気がするし、「アンパンマンの中の命として溶けて一緒にいる」という台詞も感動が増した気がするんだが、それは子ども向けとしては重すぎるかな……。頑張ったご褒美、って感じならもう一歩なんか説明が欲しい気もする。尺鑑みても夢いっぱいのメルヘンとして完璧なんだけどさ。

その私が言った「生き返らない」ルートのパルムの樹って映画はなんかいい感じの雰囲気にまとまってるけど、結局人にはなれないって意味だとちと苦いエンディングだし、ノベライズ版なんか映画より重いしな……。

そういえばパルムもドーリィも、ピノキオリスペクトの話なんだな。全然違う話だけど。やっぱ童話パロのが下手なオリジナルやらせるよりオリジナリティ出るな……。どっちのがより刺さるかというと、多分あの不気味で重い怪作パルムの方だから私のセンスってなんか……やっぱちょっと悪趣味&自分もダメージ受ける癖に、引きずるような重さを求めるような性癖なんだな。暗ければ、鬱ならなんでもいいわけじゃねぇから我ながら面倒くさいんだけど。他人に勧めるなら即決でドーリィだし。自分と味覚が同じ人以外は。

そしてアンパンマンほどの光のヒーローの話でパロっても、ピノキオって怖さが払拭できない部分があるな……と思った。この映画も子どもの頃だったら多分冒頭のボロボロの人形のドーリィとか、頼れる仲間は次々と無力化され、アンパンマンすら死んじゃう絶望でちょっと怖かったと思うんだ。あとドーリィの命の火がどんどん弱まってく演出とかも。(多分ピノキオの鼻が伸びる体罰をアレンジしてるんだろうけど、不安をあおる感じ)。原作ピノッキオは見てらんない痛々しい人形の挙動&怖さの合わせ技だし、あの天下のディズニー映画すらなんかちょっと怖いんだよな、ピノキオ。

なんなんだろうな、ピノキオ題材の誰がやってもちょっと怖い&重くなるあの感じ……。他の童話パロと違って、完全にゆるゆる平和なアレンジって少ない気がする。
2023/11/19(日) 18:38 作品感想 PERMALINK COM(0)