知ってるかい、アンパンマンも恋をするんだよ。
アンパンマンが恋をする話と聞いて見てみた。実際、アンパンマンとしてはかなり迫った恋物語じゃなかろうかと思った。アンパンマンは宇宙一カッコイイアンパンなので、宇宙を漂うお忍び逃亡お姫様が、乗り物から落っこちて来たら即座に受け止めるまでは彼の平常運転だが、受け止めた瞬間、キララ姫の顔を見て顔を赤らめている。アンパンマンが恋をする、ってのはこの映画だけの設定というわけでもなく、やなせたかし先生も「（本当に淡いけど）恋心のようなものを抱く事はある」という見解らしい。
キララ姫をお姫様抱っこして、天の川に飛びこんじゃうとことかメールヘン過ぎてときめいちまったわ……。アンパンマンの世界って綺麗だなぁ。少女のお腹が減ったら顔を千切って差し出す、魂からイケメンのアンパンに、キララ姫が落ちないはずもなく……。博愛とそのコンテンツゆえにガチ恋は無理なアンパンマンに対し、ネタ抜きでキララ姫はアンパンマンガチ恋勢である。ハッキリ告白もするし、キララ姫を好きだと言ってくれたアンパンマンの好きは、皆が好きって意味らしいと知って、嫉妬で大事なパン材料の花を叩き壊すくらいにはちょっと怖いガチ恋乙女である。
前評判通り、アンパンマンという括りではかなり迫った恋物語のように思った。雷が怖くてまともに叫ぶことすら出来なかったのに、キララ姫の声を聞いて駆けつけて来たり、二人きりで雨宿りしたり、二人炎の中に取り残されたり……。マジで下手な恋愛物よりトキメキポイントが多い話だと思った。炎の中、自分の大切な材料をダメにしたキララを怒ることなく、「本当の事を言ってくれてありがとう、ぼくはきみの事が本当に……」と「何か」を言いかけたアンパンマンのシーン泣けるわ……。
終盤の展開がとても良い。勇気の花が足りないばかりに勇気の出ないアンパンマンを庇いながら本当の事を言って、人として姫として成長したから魔法の杖に相応しい存在になれたキララも、鉄の玉になっても諦めない食パンカレーパンもみんなカッコイイ。宇宙から助走をつけるロケットアンパンチ、マージでカッコいいんだが……。
最後の照れるアンパンマンと、アンパンマンのプレゼント素敵だなぁ……アンパンマン、花を贈るタイプの男だったんだな……。
マジでなんなのこのアンパンマンとか言うイケメン。見れば見るほど好感度が上がっていくぞ、女にめっちゃ優しいし……。私もアンパンマンに優しくされて、アンパンヒーローの愛を独り占め出来ないと知ってハンケチ噛みしめてえわ……。
キララ姫は最終的にはアンパンマンが自分だけを見なくたって良いって感じに成長したと思うし、キララ姫はもちろん、アンパンマン本人でさえも気づかない、淡いものではあったけれど。それでもキララ姫は、この博愛ヒーロー男の中では一等特別に輝く綺羅星の女なのではなかろうかと思った。普通にキララ姫がうらやましいぞ、本当。
「本当の勇気」というテーマも美しいし、終盤のバイキンマンは結構怖いし、優しく感動的な話だしで、個人的には評価の高いドーリィより好みの話だった。とても面白かったしホロリとした。
