牢獄を出てから色々と濃い。



1巻の時点でもうフラグ立ちまくりだったが、ぐう聖ファリア司祭がお亡くなりになって切ない。ダンテスが海に捨てられた時、心の励ましになっていたのは良かった。

ぐう聖ファリアじっちゃんに、拾った船で特に親切にしてくれたジャコポ、そして冤罪で捕まっていたダンテスの事で出来る限り粘って、ダンテスの父も、部下も何もみんな大切にしていたモレルさんと、悪人と善人のバランスが良い作品だなと思う。ダンテスが親切なジャコポを見て、世の中ってパングロス博士(カンディードって小説の登場人物らしい)が思うほど善良でも、自分が考えたほど悪意に満ちてるわけでもないなあ、って考えるくだりとか味わい深いと思う。

仕方のないことなのだが、ヒロイン?のメルセデスが二大元凶野郎の片割れかつ実行犯のフェルナンに寝取られていてoh……ってなった。まあ14年も牢獄にいたんだもの、待ってられるわけないよね……。(それでも一年ちょっと待ってたみたいだし)。メルセデスはなんも知らんわけだし、ダンテスだってだいぶ後まで全貌が掴めなかったわけだし。結ばれないにしてもなんかもうちょっとイベント欲しいとこなんだが、この後多少は何かあったりするのかな。どうも幸福ではないようだし。

ずっとストレス溜まる展開だったので、この作品でトップクラスぐう聖モレルさんを救える展開になったのはとても気持ちよく読めた。反面、山賊のクソ親分に女がピーッされてしまって不幸になる恋人達+父親のくだりは必要だったのだろうか……。その後そのゴミカス山賊コロしてお頭に収まる、そこそこ義賊系男子ヴァンパの描写と対比の為に必要だったんだろうけれど。ヴァンパとその恋人の手レザ、結構萌えたんだけどコレで出番終わり?それはないよね。

ダンテスがファリアじっちゃに託された財宝を足掛かりに、状況に応じていくつもの姿に変装をする「船乗りシンドバッド」という義賊?として開花する巻で、色々面白くなって来たな、って感じがした。開けゴマやアラジンという定番ネタはもちろん、ハシーシュという麻薬まで千一夜物語にあやかった小道具で、デュマがとても千一夜物語を好きだったんだな、と感じるオマージュが多かった。

モンテ・クリスト伯ってタイトルなのは、ダンテスが財宝のあったモンテ・クリスト島を足掛かりと拠点にして、貴族みたいな空気を持った冒険家?義賊?みたいになるからなんだな。有名な翻訳タイトルの巌窟王ってのは、お宝のあった岩の洞窟から連想した翻訳なのかな?多分。島の名前のモンテクリストをわかりやすい岩の洞窟に、伯もなんかピンと来ないからわかりやすく島の王様ってことで王に、って感じで。ニュアンスを伝えるのを重視する感じの、意訳ってやつ。まあそっちの翻訳を読んでないから想像なんだけど。昔の翻訳の試行錯誤がうかがえるね。今はどっちかというと直訳……とまではいかなくても、元の原文、言語を忠実に再現する感じの翻訳のが多いのかな?
2024/01/03(水) 01:34 作品感想 PERMALINK COM(0)