野望野望野望野望野望野望野望野望、選挙選挙選挙選挙選挙選挙選挙選挙裁判裁判裁判裁判裁判、そして人情&医師達の物語、完。



ほとんど親父さんで保ってたのが急死のせいでどんどん落ちぶれてく佐々木一家に、ほぼほぼボランティアで食い下がって協力してた関口弁護士と里見医師ぐう聖過ぎるし、どんどん経営傾いてって最終的に潰れていく佐々木一家が見ててキツイ。それでひたすらしらばっくれ続ける財前にも腹立つやらなんやら。

しっかしいやあ……このラストはずるいなあ。散々ゴロカスとか心の中で罵倒してたのに、子ども達がお見舞い品に美味しいお菓子ないかなーとか言ってるの見て「探してごらん」とか優しい父親の顔で言ってる財前五郎見て泣けたし、そんな子どもが半分にかじって差し出したカステラの切れ端すら食えないくらい衰弱しちゃったの見て悲しくなった。人間として欠陥だらけでどの面って思ったけど、里見を一番の親友と思ってて、最後まで医者として自分の身体まで捧げたその姿にも泣いてしまった……。コレはズルいわ。まあ生きてる間はカスだったんだけどさ。鵜飼教授へのあっちへ行けとか、本当は心の底で罪悪感抱いてた描写とか、最後まで親友として熱かった里見医師とか、色々上手いが過ぎる。あっちへ行け!となすすべなし手術辺りでやっと鵜飼に人間味感じたかも。作中で言われた通り、実際コイツも遠因の一つだしなあ。

結局財前すら、医師の保身と野望まみれの世界、白い巨塔に打ち勝てなかったって思うと寂しい話だよな……。勝たれたら胸くそ悪いが過ぎるが。

中立の柳原医師が一番とばっちりよな。彼の今後は医師として立派だが、里見教授のようなささやかな幸せもないし……。

すげーーーーー長いし、すげーーーーーなんとも気持ちのやり場がない話だったわ。すげーーーーー面白かったけど。

群像劇的でどのキャラも濃いが、全体を通してみると里見と財前、二人の男達の物語だったなあ。お互い親友として両想いだったのにすれ違ってしまった感があるのも切ないね。まあ五郎カスだからしょうがないけどね。人間としても性質が反対だし。面会出来ない愛人さんに頼まれた赤いバラの花持って見舞いに来る里見、「親友は里見、女として愛してたのはケイ子」という五郎の心情も相まってだいぶブロマンスな気が。

財前ざまぁという話ではないというか、忙しさと傲慢さゆえの適当な診療で死なせちゃった佐々木家の父親に顔も病状もそっくりな人を助けられた、というのは示唆的よね。ifルート的な意味合いがあるんだろうな。それと財前だってちゃんと患者を助けている的な事を暗に言ってるんだな。

財前本人が望んでの事とはいえ、鵜飼教授だけでなく、名誉欲を婿に押し付けまくった妻や義父も財前が死んだ遠因を作っているような気はする。婦人会の見栄張りの為に夫の五郎を焚きつけまくってた奥さんも、まあそれは愛されないというか、「愛した女はケイ子」とか内心で思われるよねそりゃあね。五郎の浮気はクソだけどね(しかもケイ子以外にも手出してるし)

途中は五郎くたばれとか思ってたけど、読み終わってみると財前五郎も悲しい奴という気がしてしまった。保身と出世のドロドロに人情エッセンスが効いた人間ドラマとして面白かった。淑女だった、実質里見のヒロイン的佐枝子とか、色々良いキャラはいたがやっぱりMVPあげたいのはぐう聖かつ多分ダブル主人公の片割れ里見。

これ、元は裁判一審終わりのとこで終わってて、その後は大反響あって続き作ったんだな。正直一審だけだったらここで終わりかよ、で心には残らなかった。財前もただ嫌な奴で終わったし……。
2024/01/08(月) 19:29 作品感想 PERMALINK COM(0)