久美沙織先生の美文で書かれる、家畜竜のフン臭い牧歌的田舎ファンタジー。



いきなりドラゴンのオナラだの竜小屋のフン始末だのから始まるので酷いww表紙の主人公の兄ちゃん、金髪緑目のイケメンだけど、金髪な理由が竜のおしっこのアンモニアで自然と色が抜けてしまったとかいう衝撃かつ笑撃の理由。なんだかのんきでパッと見はヘタレそうなんだけど、飼ってる竜をとても大事にしてて、根っから純朴で優しくて、自分の無力とかの自覚もあって、ヒロインのめっちゃ気が強いディーディーに対してちゃんと相棒だったり竜の騎乗の先生になったりってなところもあり、バランスがいい。姉貴が三人もいるから、自然と女の子の扱いを知っている、ってのも男の色気を感じてしまう。序盤なんか、ディーディーとフュンフが話してるだけで楽しかった。

ディーディーはただ気が強くて偉そうなわけじゃなくて、素直な淑女っぽいとことか可愛げも素晴らしい。安定の久美先生なので、竜糞臭いファンタジーでも、二人のラブシーンとかメチャクチャ美しいんだよなぁ。キスシーンとか初めて抱きしめるシーンとか、うっとりしちゃったわ。っていうかサラッと二人して童貞と処女捨てててワロタwwwぼかしてあるからいやどうかなぁ……?って思ったけど、フュンフが童貞の仕事仲間に「あれを知らんなんてもったいない」とか言ってるからコレは確実だわwwwまあmother1のノベライズでもケンとアナサラッとヤッてたしなぁwww児童書だとキスもしなかったりするのに、対象年齢上がるとここら辺の思い切りすごいなwwぼかしてあるとはいえ。

まあそんな感じで、ディーディーとフュンフの距離は自然に、すぐに深まって、後は一心同体みたいな感じだからイチャイチャものとしてとても楽しめた。フュンフの家族とか仕事仲間なんかも個性豊かで、穏やかながら度々訪れる危機なんかはヒヤリとさせられたりホロリとさせられたりして。フュンフの親父さんの不器用な人柄好きだなぁ。貧乏してた理由とかちょっと泣けちゃったよね。

お隣の息子さんとか、そんなに悪い奴に想えなかったから(好きな子であるフュンフの長女姉貴を庇って名誉の負傷したし)、なんとなく報われそうな流れになったのも良かった。終盤のフュンフとディーディーの二人きりの冒険とか、竜の飛ぶ仕組みの解説とか、最後までとても楽しめたんだけど、一個だけ言うと、本当にラストがスパーンと、余韻もなく終わって「また別のお話」で一巻が終わりなのはちょっと惜しいかなと思った。いや一応問題は大体解決するし、ちゃんと続きあるんだけどね。それまでが良かっただけに、ここで終わり!?ともなってしまった。

美文体タイプの作家さんはそもそもページ数が嵩張っちゃうからそこら辺の兼ね合いが大変だなあと思う。久美先生も児童書だと尺が足りない感じがしてしまう(十分面白いが)。

なんにしても続き読むのが楽しみだし、やっぱり久美先生の美文体ファンタジーは最高だなぁと思った。

いきなり家畜のフン臭い流れから始まるので(笑)、なんか竜というか牛小屋的なアレを想像しちゃったんだけど、巻末の東京大学農学部部長さん、林良博さんの解説いわく(しかし人選が謎い、ファンタジーだけど農家の話だから?)久美先生の家で犬を飼っている&旦那さんが鷹匠でもある&久美先生の住んでる軽井沢では馬を楽しめる土地がある、ってな感じで、まあ久美先生の身近な動物をかけ合わせた感じの造形なのだとか。言われてみりゃあフュンフと一等仲が良いシッポなんかは、忠犬っぽさがあるな。
2024/01/11(木) 17:37 作品感想 PERMALINK COM(0)