モンテ・クリスト伯の数奇な運命&復讐譚、閉幕。



やや駆け足気味に復讐が終わっていく。ヴィルフォールに対して、モンテクリスト伯が復讐すること自体は妥当ではあるとはいえ、裁判で逆に己の罪を突き付けられて、自分がいくら妻が毒殺クソ女とはいえ、自分の罪を棚に上げて冷た過ぎた事、愛に気づいた事、そして娘や息子への愛は最初から本当であったことなんかを鑑みると、今までで一番スッキリしないかも。最後完全に狂っちゃったとこなんか哀れに思えちゃった。っていうか幼い息子のエドゥワールまで巻きこんじゃったのはモンテクリスト伯もハッキリ想定外の事だったので、私の感傷や同情とか置いといてもこの件に関してはハッキリ後味が悪い。エドゥワールだけはどうにか蘇生しようとするモンテクリスト伯のシーンも痛々しかった。モンテクリスト伯……っていうかダンテスって本来いい父親になれるような男だったよなぁ。それを思うと、血を分けた息子じゃなくて仇の息子の死体を抱き起してるこの状況を作ったヴィルフォールはやっぱり断罪されるべきとも思うが、同時にやっぱヴィルフォールとモンテクリスト伯本人が言ってるような、やり過ぎた感も感じる。

恩人と過ごした牢屋に見学に行って感傷に浸りながら、小さな子供まで復讐に巻きこんじゃった事を悔やんだり、すっかり落ちぶれたかつての恋人メルセデスと永遠の別れをしたりしてるのを見ると悲しくなっちゃったなぁ。メルセデスはスッパリ旦那を捨ててくれたけど、かといって今更ダンテスとやり直せるわけでもないし……。自分で言ってる通り、モンテクリスト伯が彼女を不幸にしたと言っても間違いじゃないし……。メルセデスが「どんな奴であれ、一度夫と定めたあの人を自分だけは最後まで庇ってやるべきだったのではないか」「どうしてあの人がダンテスを罠に嵌めたかと言えば、それは私の事を好きだったからだ」っていうのもうなずける部分はあるんだよな……。ここではエドモンさんって親しい呼び方してるのも切ないね。

最終的にはそこそこ希望のある終わり方はするけど、(伯爵もマクシミリアンさんも自暴自棄から立ち直ったようでなによりだ)文庫本で全七冊にも及ぶこの物語を読み終えた後の読後感はなんともやるせなかった。そしてそのスッキリしなさを含めて、私は同作者の三銃士よりこの作品の方が好きだなと思える。若干溜めのターンが長いし作品としても長いが、単純に人間関係やドラマが面白い。

あ、ダングラールは復讐相手の中でも一番ウンコだし、他の奴らに比べると復讐がちょっと温いんじゃないかなあって思いました。兵糧攻めは良かったけどさ。
2024/02/03(土) 11:46 作品感想 PERMALINK COM(0)