有名作家二人合同児童向けの短編集みたいなやつから、前から読んでみたかったコレだけ拾い読み。代表作の雪国は「そもそもなーにが書いてあるのかさっぱりわからん」ってレベルで合わなかったが、コレは面白かった。(雪国も今読み返したらだいぶ違うかな?)


簡潔な美文で旅芸人一座にひとときだけついていく学生のお話が書かれている。学生の主人公とヒロインの踊り子、他の旅芸人一座家族とのやり取りはほのぼのとしているくらい(ヒロインとも怪しさはなく、兄妹みたいな絡み)なんだが。一緒の宿には泊まらないし、(主人公ではなく旅芸人一座の人達がそうさせない)、宿の人やお店の人の反応、門前払い食らわす村とかで差別や住む世界が違うことはキッチリ書かれる。

こんな仕事継がせたくない(本文中でも匂わされるが、旅芸人ってのは芸だけじゃなくて女は身体を売るから)親心とか、流産した子を弔う気持ちとか、普通の人達と同じような優しさは書かれていて、普通の人と何も変わらないって思うんだけど、まあなかなかそういう偏見を乗り越えるのって難しいよね。だから学生さんの気まぐれみたいな一瞬の優しさでも、普通の人達と同じように接してくれる主人公を一座の人達は心から嬉しいって思ってるのが優しくも悲しい。

ヒロインの子は無邪気なくらいなんだけど、最後のお見送りだと全然喋らないのが切ないね。昨夜仕事で夜遅かったのに、一人でお見送りに来たくらいは主人公の事好きなのわかるんだけどね。恋物語と言うにも淡い二人の恋心が、一瞬だけの旅の道連れの感覚と重なって、寂しく切ないお話だった。思ったより優しくて穏やかな空気だから、嫌な感じはなかった。川端康成気になったら、雪国よりかはこっちから入る方が良いんじゃないかな。短めのお話なのもとっつきやすいし。
2024/02/11(日) 14:44 作品感想 PERMALINK COM(0)