第一次世界大戦でイタリア軍に入ったアメリカ人青年の話。章が細かく区切られているのもあって、題材に反しスラスラあっという間に読み進められた。


章が細かく区切られている仕様と、さっぱりした語り口のおかげで、第一部終盤までは戦争の話とか半分忘れかける勢いで雰囲気の良い短編集でも読んでるような気分だった。(冒頭で何千人も死んでるんだけどね)。序盤だけなら穏やかさがカミュに近いかも。(カミュよりか、なんかチャラい感じもするが)。だから第一部の終盤、仲間と飯食ってたらいきなり砲撃されて空気がガラッと変わるのにビックリしてしまった。いや題材が題材なんだから当然なんだけどさ。ゆるい空気で塹壕で飯食ってたら次の瞬間自分も脚大怪我して、仲間も死んじまうの、リアルだなぁと思った。序盤とかほとんど戦争の空気とかないもんなあ。

直前に読んでたドラゴンファームでも、冷戦状態というか、国と国同士で直接戦わず睨み合ってる状態だと軍の人らも緊迫感なくてたるんでる感じだったりしてたけど、ひたすら陰惨な部分ばっか抜き出すより、こんな風に緊張感が普段はない方が現実味があるなぁと思った。ある程度史実と実体験をもとにしてる本作と違って、ドラゴンファームの方は完全に架空のファンタジーなんだけど、ここら辺はあんまフィクションとかノンフィクションとか関係ないリアリティな感じがする。

主人公はわけのわからない因縁つけられて処刑されかけたことによって、戦争に嫌気がさして、タイトル通り戦争からおさらば、武器よさらばして愛する人との生活を選ぶわけだけど、その結末は残酷だなあ。二人の逃避行劇と穏やかな暮らしが、終盤丁寧に書かれるぶん余計にね。戦争から逃げても人の読んでる新聞とか、物資の不足とか、火薬臭さがちらつくように、主人公も戦争から逃げても死や不幸の気配からは逃げられない……。そんな感じの話なのかなぁ、と思った。月並みで陳腐な感想だとは思うけどね。

ヘミングウェイ、書いてる事や結末が残酷でも人と人のやり取りが温かくて、多分とても好きな部類の作家だと思うんだが、感想書こうって思うと難しいなってなっちゃう。そんなところもややカミュと個人的な印象が似てる作家だなと思った。

巻末の解説いわく、武器よさらばってタイトルになるまでに何個かタイトル候補があったそうだけど、武器よさらばが一番いいタイトルなのは前提として、ボツタイトルの中だと「The Hill of Heaven(天国の丘)」が一番しっくりくるかな?と思った。直球過ぎるし、武器よさらばほど読みたくならない、吸引力がないからまあボツになるだろうな、とも思うけど。しっかしこんなボツったタイトルの言葉選びすら綺麗な作家だなあ……。老人と海に続いてコレがヘミングウェイ二作目だけど、もっともっと他の本も読んでみたいな~って思った。
2024/02/13(火) 21:35 作品感想 PERMALINK COM(0)