褒め言葉だけど、ひっでーなこの作品。冒頭からいきなり、
メインヒロインのリュウナは魔王なのに女の子、サブヒロインの織田は女の子だけど結局魔王、って
善人主人公の一人称語りで印象の差別化がされてるわ。
でもこれ、
織田もいけなくてさ、読者から見て明らか織田は主人公のヒロの事好きなのに、この子他のヒロイン同様、主人公の事経験値とか言っちゃう。っていうかこの作品、
ヒロの優しい人柄に触れて、ヒロ自身を見て、ヒロだから欲しい、大好きってアピールしてくる子がリュウナしかいない。他のヒロイン共も一応ヒロの事好きだったんだろうけど、
他のヒロインは一律ヒロの事を「倒せば経験値」としか言わない。そら
善人勇者でもリュウナ一択になりますわな
。っていうか委員長のリリ子とか特に、私もゴメンこうむるという感想しか出ねえもんな。(ああいう腹黒キャラとしては大好きだが)。
流石に頑な過ぎたと思ったのか、
9巻では織田をピックアップしようとしてたが、時すでに遅しって感じだったよな。っていうか
夏緑先生本人が、前述のような残酷な対比をノリノリで書いていたんじゃあなあ。いうてそこは織田も今言った通りいけない点が相当あるので(
最初のアピールでリュウナと同じ事が出来たら、サブヒロインなりに健闘は出来た事だろう)、ツンデレも過剰だと己を破滅に招きますね、ホント。
魔王学校は夏緑先生が
ラノベ仕事かなり積極的に引き受けて数出しまくってた時の作品だから、同じコメディ著作のぷいぷい!と比べても話がくだらなくて薄い欠点はあるんだが、こういう
恋の頑なさだけはぜってー手抜かねぇよな、夏緑先生。流石デビュー作で
「私は愛を書いていきたい」と言い切っただけある。
っていうかコレも
あまりに話がくだらねぇからわかりにくいけど、主人公の置かれている状況は
「周りほぼ全部敵な中、一人真実愛の女の子を愛でつつ守りつつ、憧れの親友とは遠距離友情を育んで、逆境苦難を乗り越えていく勇者の姿」だから、結構根本のテーマは真面目っちゃあ真面目なんだよな。それで最終巻は、親友やヒロインの父親との関係も昇華されて、今いる状況も悪くないってなって、これからもヒロの戦いは続く。みたいな、
打ち切りっぽさはあるが綺麗に着地する感じ。
くだらん話の中に感動を見出す感じの私の性癖に、夏緑先生もやっぱり一役買ってるんだろうなぁ……。
っていうかやっぱ
夏緑先生のラノベ、私だけは好きだなぁ。筆の早い商業作家だから、私でも首傾げる著作は確かに存在するんだが、それでも作家としての姿勢がとても好き、って部分がある。